沿って, smartwatches 09/05/2022

「グノシー」「スマートニュース」よりビジネス特化 10億円超調達のベンチャー発AIサービス 最初に評価したのは投資家ではなかった〈AERA〉

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オフィスには緑がふんだんにあり、リスのすみかのよう。バランスボールなどの健康器具でリフレッシュ(撮影/写真部・松永卓也)

 短期集中連載「起業は巡る」。第3シーズンに登場するのは、新たな技術で日本の改革を目指す若者たち。第2回は、膨大なニュースや社内データの中から興味・関心に合うものをAIが選び出して配信する「ストックマーク」社長の林達氏だ。AERA 2022年2月28日号の記事の2回目。【写真】「ストックマーク」社長の林達氏

「グノシー」「スマートニュース」よりビジネス特化 10億円超調達のベンチャー発AIサービス 最初に評価したのは投資家ではなかった〈AERA〉

*** すでにニュース・キュレーション(収集)サイトと呼ばれる「グノシー」や「スマートニュース」は世に出ていた。だが芸能やスポーツ、事件など収集範囲が広く、ビジネスに特化したものではなかった。海外のビジネスニュースもほとんど入っていない。ビジネスパーソンには「自分の業種、業界の国内外のニュースを詳しく知りたい」というニーズがあるはずだ。 さらにそこにAIの特性を加える。同じ業種でも、営業と財務では微妙に必要とするニュースが違う。AIは利用者が今まで読んできた記事のバランスから選択順位に重みをつけ、嗜好(しこう)にあったニュースを探し出す。「これは絶対にうまくいく」 有馬がベータ版を完成させたのが14年のクリスマス。林はノートPCを抱え、自信満々でベンチャー投資家を訪れた。しかし、どこも反応は冷たかった。 最初にストックマークに可能性を見いだしたのは投資家ではなかった。渋谷のアップルストアの上にあるコワーキングスペース「TECH LAB PAAK(テック・ラボ・パーク)」。リクルートが運営していた会員制オフィスで、スタートアップ支援の一環として事業が審査に通ると、オフィスやサーバーを無料で使うことができた。 審査員のおじさんは、ウェブサイトをブックマークしまくって情報の海に溺れていた。そんな彼が「これいいねえ」とサービスを気に入ってくれた。有馬にとって第三者に認められたことが何よりうれしかった。有馬も会社を辞め、ストックマークに専念すると決めた。

 アップルのアップストアでアプリを売るようになり、地道にユーザーを増やしていたある日。突然、複数の企業から問い合わせが殺到した。ウェブ雑誌の「週刊アスキー」にサービスを紹介する記事が出たのだ。 サーバーがパンクしそうになり、有馬は友人に助けを求めた。■みな難問に飢えている 有名企業でエンジニアとして働いていた彼は、3日間、有給休暇を取って応援に駆けつけた。「友達だからというのもありますが、何か面白そうなことが起きてるから、参加しない手はない、という感覚だったと思います」と有馬は振り返る。このピンチを乗り切ると、友人は「面白い経験をさせてくれてありがとう」と言って帰っていった。 ネットの世界のカルチャーを有馬はこう説明する。「みんな難しい問題に飢えてるんですよ。これはちょっと無理という状況が生まれると、必ず『俺ならできる』という人が現れる。難題を解決すると、その人はヒーローになるんです」 幼少期からインターネットに触れる「デジタル・ネイティブ世代」が社会人になり始めた。彼らは林が言うところの認知バイアスが低い。米メジャーリーグで二刀流を貫く大谷翔平や、スノーボードとスケートボードを掛け持ちし、北京五輪で金メダルを取った平野歩夢。羽生結弦も前人未到の4回転半に挑んだ。彼らは不可能に挑み、楽しそうに壁を乗り越えていく。 ストックマークは社内データの検索サービスも開発。利用企業は計1500社を超す。自前のデータセンターが必要な規模だが、今はパブリッククラウドがある。有馬は感慨深げに言う。「パソコンの画面でサーバーの数を500と入力するだけで、ネットの向こう側にある500台のサーバーが一斉にブンッと立ち上がる。しかも1カ月とか1日とかではなく1時間単位で利用できる。なんていい時代なんだろう、と思いますよ」■高い山に登った先は 21年3月、ストックマークは投資ファンドのWiL、Bonds Investment Groupなどを引受先とする第三者割当増資で新たに10億円超を調達した。WiLの担当者は「自然言語処理×大企業DX×SaaS(必要な機能を必要な分だけ利用できるソフトウェアサービス)の三つが交差した市場」と表現。「ホワイトカラーの生産性向上」が叫ばれる今の日本に、ドンピシャのサービスというわけだ。

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