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艦隊を指揮する軍艦・旗艦と指揮所(10)航空戦の指揮所は地球防衛軍? - 軍事とIT(430) | TECH+ マイナビニュース マイナビ

アル・ウデイド基地のCAOC。左側の壁面上部に、全体状況を把握するための大画面がある。さらに、個人単位でそれぞれディスプレイを持っている様子も分かる 写真:USAF

こうした指揮所が、広いエリアの航空作戦をまとめてカバーしている。アル・ウデイド基地のCAOCは、シリア~イラク~アフガニスタンまでのエリアをカバーしている。

ヨーロッパに場が変わると、ドイツにあるNATOの共通指揮所から、バルト三国上空で実施している対領空侵犯措置任務までカバーしている。そんな真似ができるのは、指揮所とレーダーサイト網と個々の航空基地を結ぶネットワークが整備されているから。まさに「軍事とIT」の関わりを地で行く話である。

といっていたら、面白い写真を見つけた。そのアル・ウデイド基地のCAOCで機材の入れ替えをやることになり、いったん機材を取り払った状態の写真で、撮影は2020年10月とのこと。

右側に並んでいる各国の国旗や、その付近に置かれている什器類は同じもののようだから、同じ場所の写真とみて間違いなさそうだ。コンピュータ機器だけでなく、机もキャビネットもいったんどけて大掃除をして、そこに新しい設備を導入するという話だったらしい。「過去10年間の技術の進歩により、CAOC自体の改良と、より分散化した環境が実現可能になる」との説明。それはそうだろう。

指揮所を空に上げると

ただ、状況把握の手段であるレーダーサイトが地上にある限り、そのレーダーでカバーできる範囲のことしか分からない。それに前回にも指摘したように、こちらから敵地に出て行く攻勢航空戦になると、敵地の上空で何が起きているかを知る手段も欲しくなる。

すると、第30回などで言及したことがある、早期警戒機の出番となる。早期警戒機は要するに「空飛ぶレーダーサイト」だから、必要とされるところに出張っていけば、そこの空域で起きている状況を知る「眼」を置くことになる。もちろん、貴重な高価値資産である早期警戒機を敵地に突っ込ませるのは避けたいが、半径・数百kmの範囲をカバーできれば、自国あるいは友好国の領内からでも、ある程度の監視はできる。

そして、早期警戒機のレーダーで得た情報をデータリンク経由で地上の指揮管制システムに送れば、CAOCみたいな施設にとっては、目が届く範囲が広がる形になる。また、早期警戒機自体に管制能力を持たせて管制員を乗せれば、より現場に近いところで指揮を執れることになる。つまり、セクター担当者を現場に近いところに押し出す形になる。

それがすなわち、早期警戒管制機(AEW&C : Airborne Early Warning and Control)であり、空中警戒管制機(AWACS : Airborne Warning And Control System)である。以前にも書いたように、この両者は主として、管制能力の違いによって区別されるが、明確な閾値があるわけではない。

ただし地上の指揮所と異なり、全体状況を表示するための大きなディスプレイを狭い機内に置くのは、無理な相談。だから、指揮官は指揮官用コンソールを1つもらって、そこに)全体状況を表示させる形になるのだろう。

E-3セントリーの古いモデルなら機内が一般公開されたことがあるから知っているが、同じ形態のコンソールがいくつも並んでいるだけで、壁一面の大きな画面なんてものはなかった。そのコンソールの数の多さは、E-3の管制能力のハイレベルぶりを思わせるものであったけれども。

著者プロフィール

鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。