沿って, smartwatches 07/06/2022

米国の空を混乱させた「5G騒動」の原因は? 欠航続出の理由やその経緯を整理した【外電】|トラベルボイス(観光産業ニュース)

米国では、先週の新しい5Gサービス開始によって、世界の航空会社が米国への一部のフライトを欠航し、国内線にも影響を及ぼした。航空輸送が全面停止なるような最悪の事態にはならなかったものの、この混乱はなぜ起きたのか?経緯と顛末をAP通信が伝えている。

航空会社の関係者は、AT&Tとベライゾンがホワイトハウスからの圧力によって、多くの空港周辺で5G通信塔の運用を延期したことが、さらに混乱に拍車をかけたと非難している。

この延期によって、米連邦航空局(FAA)は、5Gネットワークの環境下で自由に運航できる航空機を絞り込む時間を稼いだ。1月20日には、5Gの通信環境がおよぶ空港で、米国の航空会社が保有する全航空機の78%に対して視界の悪い状況でも着陸を許可する判断を行った。

悪天候の場合、約5分の1の航空機が一部の空港で着陸できない可能性は残されているが、それも確実に少なくなっており、アメリカン航空とユナイテッド航空のCEOは、今後フライトに大きな混乱は出ないとする声明を出した。

何が問題だったのか?

携帯電話会社は数年前から次世代5Gサービスを展開しているが、最新のCバンドについては、より高速で安定したワイヤレスネットワークを確保することができることから、AT&Tとベライゾンは、T-Mobileと激しく競合していた。

5Gは映画などの動画をより早くダウンロードできるだけでなく、自動運転、最新の製造工程、スマートシティ、遠隔医療、IoTに依存するその他の分野にとって非常に重要なものだ。

問題は、5Gが地上の航空機の高さを測定する電波高度計で使用される範囲に近い電波周波帯で動作してしまうことにある。この問題は、すでに2020年に、航空研究グループ「RTCA」によるレポートで報告され、パイロットと航空会社に対して、安全を脅かす可能性のある無線干渉の可能性について警報を鳴らしていた。一方、通信業界団体の「CTIA」は、そのレポートに異議を唱え、5Gは航空輸送のリスクにはならないと反論していた。

なぜ各航空会社は米国のフライトを欠航したのか?

世界の航空会社は、5Gネットワークの運用が始まるのに合わせて、一部のフライトをキャンセルした。各社は、FAAによって決められた5G規制のもとでは、目的地に着陸できないのではないかと恐れていたためだ。

米国の空を混乱させた「5G騒動」の原因は? 欠航続出の理由やその経緯を整理した【外電】|トラベルボイス(観光産業ニュース)

欠航した便数は?

フライト・アウェア社によると、1月19日に欠航したフライトは計350便以上となった。その数は多いように聞こえるが、実は予定されていたフライトの2%に過ぎない。しかも、他の理由で欠航になったものも含まれている。ちなみに、今年1月3日には大雪と従業員の新型コロナ感染によって、1月19日の10倍ものフライトが欠航となった。

問題は解決された?

実際のところ、問題はまだ解決されていない。FAAは、多くの高度計が5GのCバンド信号からの干渉から適切に保護されていると発表しているが、不適当な高度計を備えた飛行機は承認されない可能性がある。つまり、航空会社はすべての空港に着陸するためには、新しい機器を設置する必要がある。

これは米国だけの問題か?

大部分において、そうだろう。FAAは、5GのCバンドの展開が、米国の航空会社にとって問題となった理由はいくつかあるとしている。米国の5G通信塔は、他の国と比べて強力な信号強度を使っており、そのアンテナは高角度で上向きに設置されているため、航空機の電波高度計への干渉が起こる可能性が出ていた。もっとも、CITAはこのFAAの主張に意義を唱えているが。

フランスでは、空港近くの5Gネットワークは、航空機との干渉を避けるために、低い出力で運用しなければならないことになっている。

米国での5Gネットワーク化は完了?

まだ完了していない。AT&Tとベライゾンは、5G Cバンド通信塔の約90%をアクティブにしたが、多くの空港で半径2マイル以内の通信塔の運用を控えることに同意した。両社はできるだけ早くその通信塔の運用を始めたいと考えているが、FAAが航空会社の安全な運航を確認するまで、合意が得られない可能性がある。

この問題に対する各企業の対応は?

AT&Tとベライゾンだけでなく、航空機製造のボーイングとエアバス、高度計メーカーのコリンズ、ハネウェル、タレスも対応に追われている。航空会社は、再びキャンセルが発生しないように、通信会社に圧力をかけている。

米国政府はどちらの味方か?

どちら側にとっても、うまくいくように対応しているといえる。

AT&Tとベライゾンは競争入札でCバンド周波数を800億ドル(約9.1兆円)で落札。これを取り仕切った連邦通信委員会は、5Gと航空機の高度計の間には安全のための緩衝帯があると主張していたが、FAAとピート・ブティジェッジ運輸長官は、この論争では航空会社の言い分に理解を示し、通信会社に運用開始を延期するように要請した。

一部の専門家のあいだでは、連邦機関の間の調整不足と非協力な姿勢には、技術的な問題と同程度の責任があると指摘している。

なぜ危機が起こったのか?

本来なら、この危機は起こらなかったはずだ。

FAAと航空会社は、Cバンドの運用が始まる前から、何年もこの問題を話し合ってきた。航空会社は懸念を表明したが、FAAがそれを無視したと言っている。アメリカン航空のダグ・パーカーCEOは、解決策には満足しているが、そのプロセスには不満を示し、「国として、すばらいしい時間を過ごしたとは言えないと思う」と述べた。

※ドル円換算は1ドル114円でトラベルボイス編集部が算出