新型MacBook Proは、ついにゲーミングPCになったのか?
ライフハッカー[日本版]2021年11月26日掲載の記事より転載
誰もが知っているように、ゲーム目的でMacを買う人はそう多くありません。
もちろんMacでもゲームはできますが、ゲームのためだけにAppleを選ぶ人は、Apple Arcadeしかプレイしない人ぐらいでしょう。
でも、M1 ProやM1 Maxといった屈強なチップセットを備えた新型MacBook Proは、ようやくゲーム専用機の選択肢の1つになれたのでしょうか。
Macがゲーム機に向かない理由は?
なかなか難しい質問ですが、できるだけうまく解きほぐして、シンプルに解説しましょう。
ひとことで言うなら、Macのハードウェアは、最適なゲーミングのシチュエーションを考慮した設計になっていません。ほとんどのMacは、流線形で薄く、エレガントなデザインになっています。
これにより見栄えがいいだけでなく、あらゆるタスクに対応できるようなコンピュータになっています。ゲームは、それらのタスクの1つに過ぎないのです。
軽いゲームなら問題はありませんが、多くのゲームは、最適なハードウェアがないとうまく動きません。
計算量の多いゲームを処理するためにグラフィックカードが必要であり、またオーバーヒートを回避するために冷却システムも必要です。
ほとんどのMacは、これらの機能を備えていません。
そもそも、多くのゲームはMac向けにつくられていない
しかし、問題はハードウェアだけではありません。多くのゲーム会社が、Mac向けにはゲームをつくらないことがほとんどです。
そのため、Windows限定のゲームが多くなります。BootcampやParallelsなどのソフトウエアを使えばMacにWindowsをインストールすることは可能ですが、それでは最適なエクスペリエンスを提供できません。
そのため、たとえグラフィック系ハードウェアが充実したMacであっても、問題が発生します。
ゲーム会社は、Macのゲーム市場は限定的であることを知っているため、そこでのエクスペリエンス向上やそのようなマシンへのソリューションの提供などにリソースを割くことはないのです。
M1 MacBookって何?
Appleは昨年、同社初のシリコンチップ「M1」を発表し、注目を集めました。
ファンタスティックなCPUを搭載した、極めて高効率なチップです。これにより、約10万円のMacBook Airが、Final Cut Proを用いた安定の動画編集機に姿を変えることが可能になったのです。
あえてM1への批判を挙げるなら、グラフィック系のパワー不足でしょうか。
M1のグラフィックはさほど悪くないものの(Macによって7コアまたは8コアを選択できる)、グラフィックの計算量が大きいタスクの場合、ベストな選択肢とはいえません。
そしてゲームは、残念ながらそのようなタスクに含まれます。
そんな中、M1 ProとM1 Maxは、M1が誇る高効率を維持したままグラフィックが強化されているため、期待が高まっています。では、実際の利用シーンではどう活躍してくれるのでしょうか。
M1 ProおよびM1 Max MacBook Proのパフォーマンスは?
手持ちのデータによると、かなり期待が持てそうです。
筆者のお気に入りのリサーチはMrMacRight氏によるもので、M1 MaxとM1 Proのテストを実施し、両者の比較も行なっています(M1との比較も行なわれていますが、前述のようにM1はゲーム向きではありません)。
同氏はM1 Maxのテストでは25のゲームを、M1 Proのテストでは15のゲームをプレイしています。
あるとき(macOS向けのアプリ)はネイティブの状態で、あるときはParallelsやCrossOver 21(MacでWindowsを走らせるためのソフトウェア)を使って、またあるときはRosetta 2(Intel向けのアプリを走らせるためのエミュレーションソフトウェア)を使ったテストをしています。
MrMacRight氏の動画は、それぞれのゲームのパフォーマンスと設定についてわかりやすく解説しているばかりか、各ゲームに最適なグラフィック設定を紹介しています。
その中で同氏は、M1 MaxおよびM1 Proのどちらにおいても、あまり高度な設定をオススメしていません。つまり、これらのMacBook Proは、ゲーミングPCとしては、ハイエンドではなくミッドレンジに位置すると考えたほうがよさそうです。
WindowsゲームはやはりMac向けではない?
1080pや1440pの設定でプレイした場合、M1 Proでは40-60fps、M1 Maxでは60-100fpsといったパフォーマンスを達成したのは次のようなゲームでした。
・Metro Exodus
・Shadow of the Tomb Raider
・The Witcher 3
一方、Baldur’s Gate 3のようにAppleのCPU向けに最適化されたゲームでは、M1 MaxとM1 Proのパフォーマンスに大きな差はありませんでした。これらの事例は、M1 MaxおよびM1 Proのゲーミング能力を知るための、とてもよい指標となるでしょう。
Parallelsを使ってOverwatchなどのWindowsゲームをプレイする場合、どんなグラフィック設定でもフレームレートは問題ないものの、動きがカクカクする現象が発生して、お世辞にも快適とはいえないようです。
また、GTA Vなどのゲームの場合、1080pであっても平均30fpsに達するのが難しく、あまりうまく動きません。
そのようなゲームについては、CrossOverなどのソリューションをお試しください。CrossOverはParallelsのようなエミュレータではないので、ゲームのパフォーマンスが向上するはずです。
MrMacRight氏によると、GTA Vは1080pで60fps近くを記録しました。これはParallelsに比べると、とても大きな改善です。
PCMagでもいくつかのテストを行なっており、MacBook Proについての有望な結果を残しています。
テストしたゲームは、次の5つです。
・Hitman(2016)
・Tomb Raider
・Shadow of the Tomb Raider
・Total War: Warhammer II
・Civilization VI
これらのゲームは要求されるパフォーマンスが低いものから高いものまでさまざまなので、テスト結果は一連のスペクトラムを与えるものになっています。
PCMagの構成(よりハイスペックのもの)では、全般的に優れたパフォーマンスが得られました。
高パフォーマンスを必要とするゲームではある程度の落ち込みが見られたり、ゲーミング専用のPCにはかなわなかったりするものの、われらがMacBook Proは健闘を見せ、高低どちらのグラフィック設定においても、平均100fpsを超える状態を維持していました。
M1 ProとM1 Maxには、最適化されたゲームが必要だ
これらのMacBook Proにとって真の意味でのテストとは、ゲーム会社が開発に時間を投じるかどうかにあります。
そのままでも多くのゲームを走らせることはできますが、ハードウェアを最大限に活用するためには、ゲーム会社がそれらのチップに合わせてソフトウェアを開発する必要があるのです。
Mac向けのネイティブなゲームがあるのは事実ですが、主流ではありません。
多くのゲームは、Rosetta 2、Parallels、CrossOverといった、完璧ではないソリューションを併用しなければプレイできません。
その場合、チップのポテンシャルを使いつくすことは不可能です。
多くのゲームが動くこと自体はAppleの功績かもしれませんが、M1 ProおよびM1 Max向けにゲームがつくられない限り、今後これらのPCが最適なゲーミング体験をもたらしてくれるとは言い難い状況です。
それでも、Macゲーマーらの雰囲気は盛り上がっています。掲示板サイトRedditの「r/macgaming」において、ゲーム会社が最新のMacBook Proにとって最適なゲームを開発するのではないかというアイデアに準じて、さまざまな構成への投資を決めたという投稿が増えています。
すでに行なわれたテストの数々により、その可能性は示唆されています。ですから、Macでゲームを楽しみたいあなたにとって、M1 ProおよびM1 Maxは悪い選択ではないといえるでしょう。
結局のところ、それらのマシンを使うゲーマーが増えるほど、ゲーム会社はApple製シリコン向けに最適化されたゲームを開発することになるのです。
Source: MrMacRight/YouTube (1, 2, 3 ), PCMag, reddit