Engadget Logo エンガジェット日本版 任天堂、「有機ELスイッチは収益性改善」報道を否定。更なる新モデルも「計画しておりません」
10月に発売予定の新製品「Nintendo Switch (有機ELモデル)」について。任天堂企業広報が、(新モデルは従来モデルよりも値上げすることで)「 収益性が高まるといった趣旨の報道がされましたが、これは事実ではございません」と否定するコメントを公表しました。
任天堂がうわさや第三者の試算等に基づく報道をわざわざ否定するのは、前例がないわけではないものの異例。さらに10月発売の有機ELモデル以降について、「現在それ以外の新たなモデルは計画しておりません」と、いわゆる次世代Nintendo Switch のうわさを素気なく否定しています。
7月6日に発表された新型ニンテンドースイッチ『Nintendo Switch (有機ELモデル)』は、ディスプレイを従来の液晶から、より鮮やかな有機ELに変更したモデル。
本体サイズはほぼそのまま、余白を削って画面が7インチに広くなったほか、従来から倍増の64GB 内蔵ストレージ、改良されたスピーカー、無段階調整に対応した幅広のキックスタンド、ドックには有線LAN端子など、全般に改良した製品です。
新型スイッチは「Nintendo Switch 有機ELモデル」、7インチ画面など改良多数。10月8日発売
一方で中身のプロセッサやRAM量は従来のまま。なので画面は広くなっても解像度は変わらず、バッテリー容量も駆動時間も据え置き。Joy-Conも従来と同じで、いわゆる次世代機や「Pro」モデルではありません。
有機ELモデルの価格は3万7980円。現行モデルより約5000円の値上げです。この仕様と価格については発表直後からさまざまな推測があり、原価率的には改善して本体の収益性を高くするのではといった推測もありました。
任天堂が名指ししないまでも日付を特定して否定したのは、このうち「2021年7月15日(日本時間)」の報道。これはつまり、部品コストとしては1100円程度の増加なので収益性は高まるとみられる、とアナリストの分析を引いて伝えた Bloomberg の記事を指すものと思われます。
新型スイッチの部品コスト増は約1100円だけ、任天堂の利益率が高まるとの推測
任天堂は「収益性が高まるといった趣旨の報道がされましたが、これは事実ではございません」と真っ向否定していますが、とはいえ実際の詳細な原価率や諸費用を公開するはずもなく、どのような理由で収益性の改善につながらないのか、5000円の価格差の内訳までは分かりません。
(「約1100円」は部品コストを積み上げた概算なので、たとえば背面キックスタンドが実は超高コスト素材で逆ザヤになるといった理由でなくても、組み立ての人件費等々で本体としての収益性は変わらない可能性はあります)。
あなたのプライバシー設定では、このコンテンツをご利用できません。こちらで設定を変更してくださいいずれにせよ、お決まりの「当社が発表したものではありません」でも「うわさや憶測にはコメントしません」でもなく、広報・IRアカウントとして製品単体の収益性について明確に否定するのはやや異例。ポジティブ材料になるなら事実と異なっても関知せずではなく、投資家の期待を積極的にコントロールする必要があると判断したようです。
そんなことよりゲーマー的に気になるのは、続く「現在それ以外の新たなモデルは計画しておりません」の部分。「7月15日報道」には特にさらなる新型の言及は含まれていないため、これは以前から続く「次世代 Switch 説」全体を指したものと考えられます。
あなたのプライバシー設定では、このコンテンツをご利用できません。こちらで設定を変更してくださいいわゆる次世代Switchのうわさとしては、心臓部のNVIDIA Tegraプロセッサを新しい世代に交代することで、現行モデルと互換性を維持したまま大幅に性能が向上する(に違いない)、NVIDIAの最新世代GPUアーキテクチャを採用する(はず)、機械学習ベースの高精度な超解像技術DLSSが使えるようになる(と嬉しいな)、後発のコンソールに劣らぬ4K表示ができる(とすごい)などなど、期待混じりでさまざまな観測がありました。
スイッチが2017年の発売当時ですら粗いと言われた720p解像度でいまだに売れ続けている以上、任天堂はコンテンツ自体の強さが売りであって、4Kやクロック速度云々の性能自体を売りに競争する必要がないといった考え方もありますが、それはそれとして、任天堂の新作を遊ぶにも性能が高ければ高いほど快適になるのは確か。
たとえば大ヒットしたゼルダの伝説ブレスオブザワイルド続編を今か今かと待ち構えているファンは多いはずですが、前作ではファストトラベルや舞台転換のたびに数十秒待たされたローディングが不評でした。任天堂はこれに対して、ソフトウェア更新を通じて限定的にCPUクロックを上げて高速化する「ブーストモード」を導入し改善しています。
「現在それ以外の新たなモデルは計画しておりません」は新製品を全否定しているようにも見えますが、ゲーム機ビジネスを継続するのであれば、発表の有無にかかわらず常に次世代モデルや改良型の研究開発を続けるのは当然。新規ハードウェアの開発自体を否定したわけではありません。任天堂も過去には「新モデルの発売予定はない」とコメントした直後に新製品を発表したこともあります。
IR的には、会社の事業計画について虚偽発表をすることはできませんが、要するに「現在」計画になくても、適切な時期に計画が変わってくる可能性は前提としつつ、有機ELモデルの直後に真の次世代機が出るらしいよ、待ったほうが良いみたいよ、の風説が流れることは牽制したい、市場に変な反応されても困る発言と考えられます。
5000円高い有機ELモデルは9月に予約受付を開始する予定。中継ぎのプレミアムなモデルを出してプラットフォームの盛り上がりを維持し、熱心なゲーマーの買い替え買い足しを促し、おさがりを通じて家族知人にゲーム仲間を増やしてさらに人口拡大・定着という、任天堂がゲームボーイでもDSでも続けてきた方程式です。
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