『楽天モバイル』の携帯電話事業への不安と期待 - ケータイ Watch
NTTドコモ、au、ソフトバンクに続く、第4の携帯電話事業者として、今年10月にサービス開始を予定している「楽天モバイル」。携帯電話サービスとしては、2007年3月にサービスを開始したイー・モバイル(現在はソフトバンクが吸収合併)以来、12年ぶりの新規参入の携帯電話事業者によるサービスになる。
これまでの経緯を簡単に振り返ってみると、楽天は2014年10月に同社グループ内のフュージョン・コミュニケーションズ(現在の楽天コミュニケーションズ)がNTTドコモの携帯電話網を借り受ける形で、MVNOとしての「楽天モバイル」をスタートさせている。
楽天グループとしてはそれ以前にもフュージョン・コミュニケーションズが2009年にウィルコム(イー・モバイルに統合後、現在はソフトバンクが吸収合併)のPHS回線を借り受けて、MVNO事業に参入したり、2012年には楽天がイー・モバイルと合弁会社を設立して、楽天イー・モバイルを設立して、MVNO事業を展開したりするなど、かねてから携帯電話事業に参入する機会をうかがっていたことで知られる。ちなみに、この楽天イー・モバイル設立前後には、楽天によるイー・モバイル買収も噂されていた。
そして、2018年1月、総務省のLTE用新周波数帯の1.7GHz帯と3.4GHz帯の割り当て募集に対し、楽天として新規割り当てを申請し、2018年4月に1.7GHz帯の周波数割り当てを受けたことで、いよいよ携帯電話事業者(MNO)として、携帯電話事業に参入することになった。割り当て直前、スペイン・バルセロナで開催されたMWC 2018では、楽天の代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が登壇し、MNOとしての新規参入をアピールするなど、携帯電話事業への並々ならぬ決意をうかがわせた。
また、総務省のモバイル研究会での議論のきっかけとなった菅官房長官の「4割値下げできる余地がある」発言を説明する場において、菅官房長官自ら「携帯電話事業の参入を新たに示した楽天は、既存事業者の半額程度の料金に設定することを計画して公表している。これらを踏まえて、今よりも4割程度、競争をしっかり行えば、下げられる余地があるのではないか、との見通しを申し上げた」(関連記事)と語り、大きな期待が寄せられていた。
さらに、一連のモバイル研究会の議論では、主要3社からのMNPで移行する際、期間拘束のある契約が障害になることから、2年契約の契約解除料が9500円から1000円に引き下げられるなど、政策面でも追い風が得られた(関連記事)。
ところが、総務省が楽天モバイルに対し、3度目となる行政指導を行なったことが伝えられ、にわかに10月1日のサービス開始に暗雲が漂いはじめている。8月26日に総務省から出された行政指導の文書では、基地局整備に向けた取り組みなどについて書かれていた。(総務省の報道資料)
1 サービスの安定的な提供のために必要とされる特定基地局の設置場所の確保に早急に取り組むこと
2 特定基地局の工事について、各工程における要処理件数、処理能力等を整理し、着実な作業進捗を指揮管理する体制を整えること
3 本年10月1日のサービス開始に先立ち、十分な時間的余裕を持って、利用者に対して品質や提供エリアを含むサービス内容について情報提供するとともに、苦情・問合せの処理のための体制整備に取り組むこと
つまり、基地局の設置場所ができていないため、エリア構築が順調に進んでおらず、工事についても十分な体制が整っていないことから、これらを改善すること。10月1日のサービス開始を前に、利用者が余裕を持って、判断できるように、提供エリアやサービス内容などの情報を提供し、苦情や問い合わせに対する体制も整えることも求められている。行政指導の内容としては、具体的かつ厳しいものと言えるだろう。