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02/11/2022
アマゾンも分割?店舗とECで分社化?米小売業で「企業分割」議論のワケ 連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤|ビジネス+IT
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アマゾンも分割?店舗とECで分社化?米小売業で「企業分割」議論のワケ
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
日本では2021年11月に、経営再建中の東芝が3会社に分割する方針を発表し、話題となった。米国でも同時期に、往年の名コングロマリットであるゼネラル・エレクトリック(GE)や製薬大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が「モノ言う株主」の要求を飲む形で分割されることが決まるなど、脱コングロマリット化の流れが生まれている。そうした中、老舗デパートのメイシーズがEC部門をスピンオフさせる案を検討中だと、経営陣が明らかにした。しかしこの流れは、小売業界全体で進められてきた実店舗とECを融合させるオムニチャネル化の動きとは逆行していると言える。企業分割でリアルとECを分けることは成長につながるのか、米論調を分析する。
在米ジャーナリスト 岩田 太郎
在米ジャーナリスト 岩田 太郎
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
<目次>- 脱コングロマリットへ、GEや東芝など相次ぐ
- 次は「アマゾン」「マイクロソフト」が企業分割を決断?
- 百貨店「メイシーズ」の判断が全米の注目を集める理由
- リアルとECは本当に分社すべきか?米有識者の声とは
- オムニチャネルが持つ欠点とは
有力な成長企業が、本業の関連事業や「将来の飯のタネ」候補の事業を保有し、総合メーカー化を進めることは、ビジネスリスクの分散に役立つと言われ、20世紀の大半を通して実践されてきた。コングロマリット化では、一部の事業の収益悪化をほかの事業の高収益でカバーすることで全体の経営を安定させ、さらには本業の信用力を使って低コストでの資金調達を可能にするというメリットもあった。 GEや東芝はそのようにして多角化した名門の代表例であり、往時は高い収益と影響力を誇った。時価総額は膨れ上がり、投資家にとっての価値を増大させる優良企業でもあったのだ。 しかし、一部のコングロマリットでは、東芝のような企業統治の失敗や、GEにみられた経営資源投入戦略の誤りのように、巨体がかえって迅速な経営判断を妨げていた。各部門の経営資源の奪い合いや管理部門の重複による高コスト体質、「巨樹の安定」ゆえの過度のリスクテイキング、市場変化の見落としなどの矛盾が露呈するようになった。 そのため、投資家の間ではコングロマリット化に関する過去の常識が覆りつつある。そうした中で、「それぞれの分割会社が専門・得意分野に集中し、最高のパフォーマンスを挙げ、分割後における各単体での企業価値の合計が分割前のそれを上回る環境の整備」を狙った企業分割やスピンオフ(分離)が注目されるようになってきた。株主にとっては、各新会社の事業の詳細な情報が入手しやすくなり、より的確な投資判断につながるメリットも指摘されている。 かくして東芝はインフラサービス、POSシステム、各種デバイスの3会社に、またGEは航空、エネルギー、ヘルスケアを担う3つの会社に分割されることになった。また、ジョンソン&ジョンソンは有力な絆創膏ブランドの「バンドエイド」や、市販鎮痛薬の代表格である「タイレノール」、薬用マウスウォッシュの「リステリン」などを擁するコンシューマー部門と、医療機関向けに新型コロナウイルスのワクチンを含む薬剤や医療機器を販売する製薬部門に2分割される。 こうした流れを受け、ウォール街では、「次の分割はどの会社か」という候補探しも始まっている。米投資サイトの「モトリーフール」では、アナリストの座談会で予測が行われ、世界的化学・電気素材メーカーであるスリーエム(3M)、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイをはじめ、テック大手のマイクロソフトやアマゾンの名前が挙げられた。 このうちアマゾンについては、EC部門とクラウドのAWS部門の分割が、米国内で高まるIT大手の分割論の趣旨に沿うだけでなく、従前から一部投資家たちが「アマゾンは分割した方が、それぞれの部門からの投資リターンが増大化する」と唱えていたこともあり、2022年にはさらなる議論が進む可能性がある。 マイクロソフトのケースはさらに具体的だ。米経済専門局CNBCは1月11日、マイクロソフトコンシューマー・コマースグループのゼネラルマネージャーであったベン・スリブカ氏へのインタビューを放映。その中でスリブカ氏は、「マイクロソフトは本体にAzureを中心とするクラウド事業を残し、オペレーティングシステムのWindowsおよび生産性サービスのOffice事業をスピンオフすべきだ」と主張した。同氏は、社内での経営資源の奪い合いで成長分野であるAzureの足が引っ張られることを懸念材料として挙げた。 また、米ウェルズ・ファーゴ証券のアナリストであるマイケル・タリン氏は、「マイクロソフトのAzureの市場シェアが2028年にアマゾンのAWSを抜く」と予想しており、マイクロソフトが分社でクラウドに専念する未来図は支持を増やす可能性がある。【次ページ】百貨店「メイシーズ」の判断が全米の注目を集める理由お勧め記事
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