2022年、日本で「個人間送金」が拡大する【鈴木淳也のPay Attention】-Impress Watch
昨年(2021年)に金融IT業界で話題となったトピックに「Googleのpring買収」が挙げられるが、モバイルアプリなどを使ったデジタルでの個人間送金の世界は近年急速に変化しつつあり、Apple PayやPayPayなどの“ウォレット”アプリの普及と合わせて2022年以降に利用が進むと考えられている。
これは日本に限らず、米国などの他国でもいえることで、環境の変化が少しずつこの市場を後押ししつつある。一方で、金融サービスとは地域ごとの事情に根ざしたものでもあり、その姿は一様ではない点にも注意したい。
前述のGoogleのpring買収で1つ重要な点は、Googleのようなグローバル企業でさえローカル事情を無視できないという部分にある。これは「BNPL(Buy Now, Pay Later)」の日本事情の記事でも触れた、お金にまつわる習慣や文化、そして法規制は国によって異なる。ゆえに手早く市場参入するにあたっては現地で一定のプレゼンスのある企業を買収し、そのシステムをうまく活用するのが近道となる。
モバイル端末を使った個人間送金は、もともと東南アジアやアフリカを中心に2000年代後半から盛り上がった。「Unbanked」と呼ばれる銀行口座普及率が低い地域において、急速に普及しつつある携帯電話(フィーチャーフォン)を使って金融サービスを提供できないかと検討されたのが始まりだ。ケニアなどでスタートした「M-Pesa」が有名だが、銀行支店こそないものの、出稼ぎでの送金や預金などのニーズはあり、これらを安全で素早く処理するための仕組みとして利用が進んだ背景がある。
携帯電話サービスもプリペイド方式が一般的で、携帯電話の料金支払いと送金サービスが一体化しており、小さな村であっても出張所のような形で携帯電話会社のサービスコーナーが設置され、これが一種の銀行ATMのように機能している。
冒頭の写真にあるように、先進国の移民が多いエリアでも携帯電話サービスと金融関連サービスの複数が一体化した店舗をたびたび見かけるが、これは出稼ぎ労働者や移民が必須サービスとして携帯電話を契約しつつ、本国への送金も行なうという事情に由来する。エルサルバドルが国外からの送金における手数料支払いを嫌ってBitcoinを導入したのも、それだけ送金ニーズがあることの証左となっている。