シン・国産時計【セイコー(SEIKO)】編 vol.6 ―― 傑作ストップウオッチの機能美をクロノグラフで再現した「プロスペックス スピードタイマー」 日本が誇る4大ウオッチメーカーの重要人物をルポ
ホワイトダイアルモデルは1000本だけの限定仕様。人気も上々と聞く。
新型コロナウイルスの世界的まん延の関係から、改めて日本には輸入品が数多く出回っていることに気付かされた人もいるだろう。時計市場においても欧州勢を中心に入荷が遅延し、予定されていた発売日が延期となった新作もある。【関連写真】先端が曲げられたクロノグラフ針は必見!!そこで時計だけではなく注目を集めているのが、“国産”だ。スイスに次ぐ時計大国の日本には、長い歴史を持つ4大メーカーが存在し、国内外問わず高く評価されている。いま再び、“国産”の底力を見つめ直すきっかけとして大手4社のキーパーソンに取材し、その高度な技術や斬新なアイデア、先進的なデザインの魅力あるコレクションについて尋ねた。第6回は、【セイコー(SEIKO)】のスポーツウオッチブランド【セイコー プロスペックス(SEIKO PROSPEX)】に生まれた新たな基軸、「プロスペックス スピードタイマー」の開発秘話やこだわりの点を知るためのインタビューを紹介する。
世界初の量産型自動巻きクロノグラフを祖とする、新生スピードタイマーの実力
セイコー プロスペックスといえば、やはりダイバーズウオッチのイメージが強い。1965年に国産初のダイバーズを生んだ技術を受け継ぐ、本格派が展開されているためだ。“海”におけるオリジナルモデルが登場したほぼ同時期、実は“計時”の分野でもセイコーは偉業を達成していた。その輝かしい歴史を振り返り、新たな伝説への第一歩として新生スピードマスターは生み出された。今回、企画段階から携わるセイコーウオッチの加藤秀明さんと木村正幸さんに話をうかがった。
歴史的に重要な懐中時計型ストップウオッチをモチーフにしたデザインが個性的だ。
(加藤さん)「足掛け約2年をかけ、ようやく発売までたどり着きました。セイコーの計時技術の高さを物語るような、そんな腕時計を作りたいと考えたことがきっかけでした」2020年(開催は1年延期されて2021年)がオリンピックイヤーだったことも関係している。1964年に開かれた東京五輪では、セイコーが公式計時を担っていた。(加藤さん)「当時、誤差なく正確に計測できる機械式のストップウオッチを開発したほか、クオーツ式のクリスタルクロノメーターを導入。以降、計時の電子化が進みました。同じ1964年には国産初のストップウオッチ機能付き腕時計、クラウン クロノグラフも登場。この時代に計時技術は一気に花開いたのです」1964年の東京大会を含む夏冬計6大会の五輪や世界陸上など、セイコーは主要なスポーツイベントのオフィシャルタイマーを担当してきた。そのストーリーは新シリーズの開発ともリンクしている。(木村さん)「そうした歴史を投影しながら、腕時計として機能的で新しいクロノグラフを作ろうという議論を重ねました。新型コロナウイルス感染症による影響もありましたが、リモートで会議を開いて着々と進めてきたのです」
次ページは:セイコークロノグラフの伝統=明確な計時表示を継承する最終更新:WATCHNAVI Salon