沿って, smartwatches 23/06/2022

“暴れ馬”Core i9-11900Kの性能を存分に引き出せるMSI「MEG Z590 ACE」を徹底テスト!

特集、その他

第4のブースト機能“Adaptive Boost Technology”をより深く試してみた!! text by 加藤 勝明

ABTに新たな選択肢

 Rocket Lake-SはZ490などの旧世代マザーでも問題なく動かすことができるが、最新のZ590チップセットでないとサポートされない機能がある。Core i9-11900K/KFに組み込まれた新しいブースト機能「ABT(Adaptive Boost Technology)」がそれだ。第11世代Coreのブースト機能は全モデルに搭載されている「Turbo Boost 2.0(TB2.0)」、Core i7以上に搭載されている「Turbo Boost Max Technology 3.0(TBM3.0)」、そしてCore i9限定で「Thermal Velocity Boost(TVB)」がある。各ブースト機能はそれぞれ効く条件(アクティブコア数や温度などの余裕)があるが、ABTはアクティブコア数が5~8基のときに全コアを5.1GHzまで動かすことができる。

Intelの資料より抜粋。TB2.0のブーストはアクティブコア数が多いほど下がる。TVBはTB2.0のブーストに+0.1GHzしか上乗せすることはできないが、ABTは最大5.1GHzまで引き上げることを可能にする。ただし5コア以上稼働していないと発動しない

 ABTを使うにはCore i9-11900K/KFを搭載したZ590マザーが必要だが、その上でABTに対応したUEFI BIOSに更新されていること、さらにUEFI BIOSの設定でABTを有効にしておく必要がある。

MEG Z590 ACEのサポートページ(https://jp.msi.com/Motherboard/support/MEG-Z590-ACE)を見ると、バージョン7D04v11でABTへの対応が明記されている。もしUEFI BIOSが初期出荷バージョン(7D04v10)の場合はABTは利用することができない

 今回の検証では、4月下旬に、MSIよりβ版UEFI BIOSの提供を受けて検証したが、そこでMSIが独自にABTに新しいモードを追加していることが確認された。基本的にABTは無効か有効の2択だが、7D04IMS.113ではさらに「ABT 251W」なる設定が存在する。この設定の詳細までは提供されなかったが、通常のABTはCPUのPower Limit(PL1およびPL2)が無制限(4096W)となり、CPUの限界までブーストがかかるが、ABT 251Wの場合はPL1およびPL2が251Wに制限される。

 MEG Z590 ACEのファクトリーデフォルト設定では、PL1とPL2はともに無制限なので、ABT 251W設定はCPUの全コアをフルパワーで回す時間を短く抑えつつも、PL1/PL2 251Wの範囲で収まるような軽い処理(Webブラウジングや大半のゲームなど)では、ABTを効かせてレスポンスを上げるというコンセプトだと推察される(これは後ほど検証しよう)。とくにCPUの冷却に制限があるような構成ではABT 251Wを選択することをオススメしたい。

MEG Z590 ACEでABTを有効にするにはUEFI BIOSの「OC」ページを開く。今回テストで使用したβBIOSでは、この機能を有効化する「ABT」のほかに、「ABT 251W」なる設定も追加されていた上の画面で「ABT」を選択した状態。PL1およびPL2を示す設定(Long Duration Power LimitおよびShort Duration Power Limit)は4096W、事実上のPower Limit無制限設定になっている。ファクトリーデフォルトもこの設定だABT 251W設定にする(要再起動)と、PL1とPL2の値が251Wに変化するUEFI BIOSで「ABT」を選択した状態で「CINEBENCH R23」のマルチコアテストを走らせてみた。全コアフルロード状態で約2分半経過しても全コア5.1GHzで動作しており、ABTが機能していることが分かる「ABT 251W」で同様のテストをしてみよう。マルチコアテスト起動直後にもかかわらず、一部のコアが2.7GHzや1.6GHzといった低いクロックになっていることが分かる

MSI独自ツールにも注目

 続いてMSIの独自機能にも目を向けてみよう。以前は「Dragon Center」というユーティリティがドライバCDに収録されていたが、MEG Z590 ACEでは設計を一新した「MSI Center」というより新統合アプリに変更されている(Windows 10のストアアプリから無料でDL可能)。最大の特徴は、ユーザーが使う機能を後から選んで追加するインストールするという構造に変わったことだ。この手のマザーメーカー独自ユーティリティでは、ゲームで遊ぶつもりはないのにゲームに特化した機能を入れられたり、RGB LEDに興味はないのに制御機能を組み込まれたり――ということが多く、使わない機能が行ってしまうことを煩わしく感じてしまうことも少なくなかったので、使う機能に絞って導入できるのは非常にありがたい。

MSI Centerを導入した直後。組み込みたい機能を“Install”するまではシステムに組み込まれないのが◎。この状態でもドライバーなどの更新をチェックする機能(LiveUpdate)が使えるので、保守管理の観点からも導入する意義はあるMSI製品のRGB LED制御機能「Mystic Light」もMSI Centerのモジュールとなり、さらにUIもスッキリと見やすくなった。マザー側のRGB LEDの設定はMystic Lightを消しても残るCPUのクロックや温度の状態表示機能は、モジュールを追加しなくても利用できるCPUの倍率などを変更するシンプルなOC機能は別途モジュールを追加することで利用可能になる

 MSI Centerのもう一つの特徴は、“AI”を活用した機能がいくつか追加されたことだ。CPUクーラーやMSI製ビデオカードのファン回転数制御機能にはじまり、オーディオ入出力に対するノイズキャンセル機能、クリエイティブ系アプリ利用時のパフォーマンスを向上させる機能などがそれだ。すでに他メーカーで実装されてきた機能の後追いではあるものの、MSI製マザーで利用できるようになった点は素直に喜びたい。

CPUとMSI製ビデオカードのクーラーのファン回転数制御を行なう「FROZR AI Cooling」。検証時のバージョンではMSI製のビデオカードをシステムに追加するとモジュールが出現。マザーもビデオカードもMSI製で揃えた猛者へのご褒美!?ゲームのみならずテレワークでも活躍するノイズキャンセル機能。マイクでとらえた声をAIでノイズキャンセルしたり、逆にスピーカーから出る音に対してもノイズキャンセルをかけることができる「Creator Mode」なる機能では、クリエイティブ系アプリのパフォーマンスをより引き出しやすくなる機能とのこと。はっきり体感できるほどの効果は現時点では分からず