AIによる産業の再定義と、それを規制する日本 - 「ソフトバンクワールド 2018」で孫正義がにじませた危機感
7月19日、ソフトバンクグループのビジネス向けソリューション展示会「ソフトバンクワールド 2018」がはじまりました。イベント冒頭に行われた基調講演では、ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫正義氏が登壇し、「AIを制するものが未来を制する」として、同社が掲げる情報革命の未来について語りました。
未来を拒否しているのは誰だ
かねてより孫氏は決算発表会など公の場において、「シンギュラリティ(技術的特異点=高度化する人工知能が人間の知性を超えるポイント)」を迎える未来について、繰り返し語ってきました。しかし今回は、概念としてその存在を示すだけでなく、実際に人類はテクノロジーによりどこへ向かうのか、「AIによる産業の再定義」という視点から具体的に訴えました。
孫氏は今回の講演で、AIの活用やそれによる変革に前向きでない考え方、そして古いものを守るために新しいものを規制する国の姿勢に対して、かつて見ない強さで警鐘を鳴らす発言を繰り返しました。
「未来のことはよくわからない、だから現状を精一杯生きるべきだ。そう言われることがありますが、本当にそれでいいのでしょうか。私が思うに、多くの日本人は受け身で、今起きている現実にどう対応するかでいっぱいになっている。そういうことに私は危機感を抱いているわけです」(孫氏)
「たとえば日本ではライドシェアが法律で禁止されている。こんなバカな国がいまだにあるということが僕には信じられない。これからやってくる未来を政府が自分で止めている、そういう危機的な状況。過去を守りたいから未来を否定する。考えられない状況ですね。国だけでなく、企業や個人がAIの未来を想像しきれず、人間が行ったほうが安心できると思い込んでいるなら、未来を拒否してしまっているのではないでしょうか」(孫氏)
AIを制するものが未来を制する
ソフトバンクは2017年、サウジアラビアのPIFや、Apple、クアルコムなどの出資により10兆円規模の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立。世界の先端をゆく多くのテクノロジー企業に投資を行っています。それぞれ異なる産業分野でビジネスを行っていますが、共通するのはどの企業もAIが躍進の基盤となっていることです。2017年に続き、今回も基調講演の中でその一部の企業が事業内容について、プレゼンを行いました。
ソフトバンクは「AIにまっしぐら」
各社のプレゼンを振り返って孫氏は、情報革命の中心が「PCからはじまり、それがインターネットになり、モバイルインターネットになり、そしてAIに代わろうとしている」と総括。ソフトバンクグループが「AIにまっしぐらに進んでいるということを紹介したかった」と述べました。
「ソフトバンクは通信会社から投資会社に変わったのではないかと言われます。投資を行っているのは事実ですが、それだけではソフトバンク本来の姿を見誤ってしまうのではないでしょうか。ソフトバンクはインターネットの会社に多く投資しグループを作ってきましたが、この1年間で急速にAIの世界でそれぞれのトップの会社を加え、ファミリーを構築し始めています」(孫氏)
インターネットは従来の媒体に変わる新しいメディアとして、広告収入を主なビジネスモデルとしてきましたが、AIは産業そのものを変える、つまり「あらゆる産業がAIで再定義される」と、孫氏は繰り返し強調します。今日、AmazonやGoogleといったインターネットジャイアントが存在するように、10年後、15年後にはソフトバンクビジョンファンドから、「AIジャイアント」が登場しているかもしれません。
最後に、基調講演でプレゼンを行った企業をいくつか紹介します。