「直流安定化電源」は1台あると超便利
買ってみたんです、直流安定化電源
「直流安定化電源」って、聞いたことがあるでしょうか。名前の通り「安定した直流を出力する電源」のことです(笑)。普通の家庭や家電ショップなどでも、ほぼ見かけない機器ですが、今の時代、あるとすごく便利なんです。
たとえば、こんなことで不安になった経験はありませんか?
スマホ用のモバイルバッテリーを買ったけれど、なんだか容量が少ない気がする。買ったばかりのポータブル機器の調子が悪い。充電式乾電池の減りが早くなってきた。いろいろなACアダプタがありすぎて、必要なアダプタが見つからない……。
とくに最近は、100円ショップなどでも、モバイル機器や乾電池、充電池が売られています。しかし、「いまひとつ、そのスペックがわからない。表示通りなのか不安」なんて感じてしまうこともよくあります。
そんなときに役に立つのが、直流安定化電源です。
少し前までは、開発者や設計者など、プロユースだったこともあり、安定化電源は数万円していました。しかし、今は価格もだいぶ安くなり、筆者がアマゾンで購入した「Kungber 30V10A」は、6888円(割引クーポン適用、税込)でした。もっと早く購入しておけば良かった、と後悔するほどの値段です。
直流安定化電源でできること
どんなことができるのかを列記してみます。
1)好きな電圧で出力できる(筆者の購入したモデルは0.00V~30.00Vの範囲)。2)出力が安定している(いろいろと影響をおよぼす電源からのノイズが少ない)。3)他の機器に繋いだときに、電流や消費電力がリアルタイムに表示される。4)電流の上限を設定できるので、万が一のときも回路を壊さない。
PC本体をはじめ、ほとんどの周辺機器、バッテリーで動く製品は、直流が電源に使われています。コンセントにつなぐタイプの製品は、ACアダプタや内部で家庭用の100Vから直流電流に変換されることもあります。
次は具体的に、直流安定化電源が役立つケースを5つ挙げてみます。
動作不良の原因が、電池なのか機器なのかを切り分けられる
○ACアダプターがみつからず、機器が使えない。充電ができない。(ケース1) こういうときは、機器のアダプタ差し込み部分に書かれた電圧に直流安定化電源の出力を設定します。ユニバーサルアダプターがあれば使い、なければ製品の内側のメス端子の+とーに直流安定化電源の出力をつなぎます。新しいACアダプターを入手するまで、直流安定化電源を使うということです。
○機器の電源が入らない。調子が悪い。
■ACアダプターがある製品の場合(ケース2) ACアダプターを使わず、ケース1の方法を試しています。ちゃんと動けばACアダプターの故障が疑われます。新しいACアダプターを入手するまで、直流安定化電源をACアダプターの代わりに使います。
■コンセントを挿して使う製品の場合(ケース3) ACプラグをコンセントに挿さない状態で、機器内部の電源基板の出力部分に直流安定化電源をつないでONになるか試します。出力電圧は、機器内部に6V outや12V out(電源部の場合)、6V in、12V in(メイン基板の場合)などと基板にプリントされてる場合がほとんどです。
もし動作するなら、機器の電源回路が故障。動作しないなら、メイン基板などが故障している可能性が高いです。修理に出すか、廃棄するかを判断します。ただ、機器のケースを開けると無料保証の対象外になる場合があります。あくまで上記は、保証外になっても、急いで機器を使いたい、応急として使う場合などの対処法です。
■乾電池(ボタン電池)で作動する製品の場合(ケース4) バッテリー挿入部に、乾電池を入れない状態で、安定化電源を接続し、既定の電圧*をかけます。もし動けば、乾電池やボタン電池の寿命、充電式乾電池なら再充電の必要や劣化(充電池の寿命)なので対処します。
*規定の電圧は単1~単5電池1つあたり1.5Vです。電池が直列に使われているなら1.5V×個数分です。並列の場合は、つながりかたで電圧を判断します。ボタン電池の場合は、出力電圧が電池に刻印されています
◯ノートPCやスマホ、周辺機器の電源、充電器として使う(ケース5) 最近の安定化電源は、USB出力が搭載されているタイプが多くあります。筆者が購入したKungber 30V10Aには、5V/2AのUSB出力端子が1口あり、そのまま充電器や電源として利用できます。もし、購入するならUSBポートがついたタイプを選ぶと便利です。
最近の安定化電源にはUSBポートを備えた製品も多い
ACアダプターや乾電池より、安定化電源が便利な理由
安定化電源をオススメする理由は2つあります。1つは、感電しにくいこと。上のすべてのケースでは、故障を疑う機器のACプラグを抜いた状態、乾電池を外した状態で機器をテストします。PCの周辺機器は5~12Vで動作することがほとんど。万が一、回路や安定化電源の端子に指先が触れたとしても感電することはありません**。
**日本電気協会が定める「人が触れて許容しうる電圧」(感電しない電圧)は、皮膚が濡れている状態で25V、通常は50Vとしています
もう1つのメリットは、安定化電源の多くは、出力端子をショート(+とーが短絡)させても大丈夫なことです。なぜなら、安定化電源は、ショートする(機器の回路がショートしている場合)、ショートさせる(機器に流れる電流をあらかじめ設定する場合)を想定して設計されているからです。規定外の高い電圧や電流で、間違った場所に接続しなければ、試験する機器から煙が出たり、故障することはほぼありません。
ショートしても壊れない(電流を高く設定しているとわずかに火花が飛ぶことがあります)
自作PCやDIYをしない人にもオススメです
たとえば、DIYの必需品であるテスターなどで電池の電圧を測り、「ちゃんど電圧はあるのになあ」と思っても、それは「開放電圧」と呼ばれる、負荷がかかっていない状態の電圧。ACアダプターの故障や、バッテリーの容量不足で「開放電圧」で電圧は足りているのに、つなぐと機器に必要な電流が足りないケースもあります。
安定化電源を使えば、電池ケースの金具やDC inの端子につなぐだけで、待機時とオンの時の電圧、電流、消費電力がリアルタイムにわかるだけでなく、機器に電気も供給できるスグレモノです。
上で紹介した方法は、「電圧や電流を規定値にしておく」「つなぐ箇所や、プラスとマイナスを間違えない」さえ守れば、それほどリスクなく手軽にできます。
もう少し専門的に使うなら、流入電流を見ながら充電式バッテリーの満充電の時間を測定したり、バッテリーの容量(○○mAh)を調べることも可能です(ただし、多少の知識がないと、過充電などのリスクがありますので、注意が必要です)。
日頃、「この機器や充電池、使えるのか、捨てるべきかを迷っている……」とお悩みの方も多いはず。サイズも小型化し、価格もこなれてきた直流安定化電源。興味をお持ちなら、1台持っていると便利かもしれません。