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『ゴジラvsコング』モンスターバース徹底解説 ─ 『GODZILLA ゴジラ』シリーズ&『キングコング:髑髏島の巨神』総復習で対決に備えよ モンスターバース/モンスター・ヴァース

ゴジラとキングコング、日米の二大怪獣がいよいよ大スクリーンで激突する。映画『ゴジラvsコング』は、ハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』シリーズと『キングコング 髑髏島の巨神』(2017)からなる「モンスターバース」の集大成だ。日本のファンが待ち望んだ決戦の上陸にあたり、ワーナー・ブラザース&レジェンダリー・ピクチャーズによる、この映画史上まれに見る挑戦を紐解いてみることにしよう。

「モンスターバース」(モンスター・ヴァースとも表記される)について解説していく前に、まずは「“バース”とは何ぞや」というところから話を始めなければならない。ハリウッドでは『アベンジャーズ』(2012)の大ヒットによる「マーベル・シネマティック・ユニバース」の成功以来、いくつもの映画が同じ世界観を共有する“ユニバース”の構想が散見されるようになった。「モンスターバース」もそのうちのひとつである。

『アベンジャーズ』を経て登場したユニバースのうち、代表的なものは『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)などDCコミックスに基づく「DC映画ユニバース」、ジェームズ・ワン監督が仕掛ける『死霊館』ユニバース、『ハリー・ポッター』シリーズの世界観を拡張する「魔法ワールド」、そしてドラマ「ウォーキング・デッド」ユニバースなど。それぞれのユニバースには、独自の世界観やシリーズ構想などの特徴がある。

「モンスターバース」の場合、その名の通り、“モンスター”を中心としていることが特徴だ。東宝・ワーナー・レジェンダリーが協働し、さまざまな怪獣やモンスターが共存する作品群を構築している。ただし、3社は当初からユニバース化を告知していたわけではなく、最初は個々の企画として発表されていた。2010年に第1作『GODZILLA ゴジラ』の企画がスタートし、2014年に第2作『キングコング:髑髏島の巨神』が始動。翌2015年、『ゴジラvsコング』の製作が決定してユニバース計画が告知されている。ちなみに「モンスターバース」という名称が発表されたのは2017年1月のことだ。

『GODZILLA ゴジラ』(2014)

記念すべき「モンスターバース」の第1作は、ローランド・エメリッヒ監督『GODZILLA』(1998)以来、実に16年ぶりのハリウッド版となった『GODZILLA ゴジラ』。あくまでもハリウッドの超大作として、東宝によるシリーズ第1弾『ゴジラ』(1954)に敬意を払いながら“ゴジラ”という怪獣を再解釈してみせた。

1999年、日本の原子力発電所で謎めいた地震が発生した。核物理学者のジョー・ブロディは真相をつかもうとするが、その矢先に大地震が起こり、発電所は倒壊する。15年後の2014年、ジョーの息子であるフォードは軍人として世界中を飛び回る日々を送っていた。しかしある日、疎遠になっていた父が日本で逮捕されたことを知る。身柄を引き取るべく日本を訪れたフォードに、ジョーは「政府は何かを隠している、発電所には何かがある」と語った。かつての事故現場である原子力発電所には正体不明の巨大な物体が出現しており、施設を管理する特務機関モナーク(MONARCH)の芹沢猪四郎博士は、真相に近づきつつあったジョーの主張に耳を傾ける。しかしその時、15年前と同じように大地震が襲いかかり……。

監督は『モンスターズ/地球外生命体』(2010)のギャレス・エドワーズ。長編第2作にしてスタジオ製作の大作映画、しかも『ゴジラ』のリメイクという大抜擢となった。ドキュメンタリーにも近い作風で人間目線の物語を描くことへのこだわり、一方で怪獣同士の戦闘を絶妙に“見せない”演出を採用するなど、東宝版『ゴジラ』シリーズとは大きく異なるアプローチで新たなゴジラ映画の形を提案した。ギャレスはこの作品を経て『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)を手がけている。

登場する怪獣はゴジラ、ムートー(M.U.T.O.)。出演者にはアーロン・テイラー=ジョンソン、渡辺謙、エリザベス・オルセン、ジュリエット・ビノシュ、サリー・ホーキンス、デヴィッド・ストラザーン、ブライアン・クランストンら。

2020.6.20 12:02

『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)

アメリカが誇る人気モンスター、キングコングを新鋭ジョーダン=ヴォート・ロバーツがまったく新しい造形で描いた『キングコング:髑髏島の巨神』。キングコング映画の歴史は『キング・コング』(1933)から始まり、これまで本多猪四郎やジョン・ギラーミン、ピーター・ジャクソンら名監督が挑んできた。本作はそのうち8作目で、『ゴジラvsコング』が9作目となる。

ベトナム戦争からアメリカが撤退した直後の1973年。特務機関モナークの研究者ランダは、南太平洋にある未知の島「髑髏島」の調査を政府に要請し、帰還兵のプレストン・パッカード大佐や、元英軍の傭兵ジェームズ・コンラッド、戦場カメラマンのメイソン・ウィーバーらとともに島を訪れる。一行は地質調査の名目で島への空爆を開始するが、そこに怒り狂ったコングが現れ、チームは散り散りになってしまった。仲間と合流すべく移動を開始する一同だったが、髑髏島には見たこともない怪獣たちが生息していて……。

「モンスターバース」第2作にして、前作『GODZILLA ゴジラ』とは大きく趣を異にする本作は、戦争映画の名作『地獄の黙示録』(1979)にオマージュを捧げながらキングコングの“青年期”を描く。キングコング映画のお約束ともいえる、摩天楼によじ登るコングの姿はお預けとなった。青春映画『キングス・オブ・サマー』(2013)を受けて抜擢されたロバーツ監督は、日本のポップカルチャーを敬愛し、『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『AKIRA』「新世紀エヴァンゲリオン」などへのオマージュをありったけ作品に詰め込んでいる。

登場怪獣はコング(キングコング)、スカルクローラー、バンブー・スパイダー、スカル・バッファロー、リバー・デビル、サイコ・バルチャー、スポア・マンティス。出演者はトム・ヒドルストン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマン、ブリー・ラーソン、ジン・ティエン、ジョン・C・ライリー、MIYAVIら。

2020.6.27 12:032020.6.27 12:02

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)

「モンスターバース」第3作であり、『GODZILLA ゴジラ』の正統なる続編として製作された『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は、前作が抑制の効いた怪獣映画だったのに対し、日本の「平成ゴジラVSシリーズ」を彷彿とさせる仕上がり。ゴジラのほか、モスラ・ラドン・キングギドラという『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964)と同じ顔合わせが実現した。

『GODZILLA ゴジラ』から5年後。特務機関モナークは、怪獣の存在を長らく隠匿してきたがゆえに非難の対象となっていた。世界各地で怪獣(タイタン)が発見され、“怪獣は人類の敵”との世論が高まる中、モナークは各地に前哨基地を設置。そんな中、中国でモスラを研究していたエマ・ラッセル博士と娘のマディソンがテロリストによって拉致された。芹沢猪四郎博士は、エマの開発した装置「オルカ」が狙われていると推測する。その装置を使えば、怪獣との交流や、あるいは怪獣の操作も可能なのだ。エマの元夫・マークはエマとマディソンを救出すべく動き出すが、世界各地で怪獣たちが次々と目覚め、世界の異変を悟ったゴジラも眠りから醒める。

監督は『GODZILLA ゴジラ』のギャレス・エドワーズから、『X-MEN2』(2003)『スーパーマン リターンズ』(2006)脚本家のマイケル・ドハティにバトンタッチ。低予算ホラーの監督としても活躍してきたドハティは、ジャンル映画への偏愛、本気すぎる東宝怪獣映画愛を前面に押し出した。ゴジラを“神”と見る視点を強調し、神話からインスパイアされて怪獣たちを描き直した本作では、宗教画を思わせる美しいビジュアル、真正面から怪獣同士をぶつける戦闘演出のオンパレードで日本の怪獣映画ファンをも驚愕させている。伊福部昭・古関裕而による音楽の採用、1954年版『ゴジラ』への敬意と執念もポイントだ。

主な登場怪獣はゴジラ、モスラ、ラドン、キングギドラ。出演者はカイル・チャンドラー、ヴェラ・ファーミガ、ミリー・ボビー・ブラウン、渡辺謙、サリー・ホーキンス、チャン・ツィイー、チャールズ・ダンスほか。

『ゴジラvsコング』(2021)

「モンスターバース」の第4作にして集大成となるのが『ゴジラvsコング』。前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で“怪獣王”の貫禄を見せつけたゴジラと、『キングコング:髑髏島の巨神』から約50年を経て再登場するキングコングがいよいよ大スクリーンで相まみえる。

怪獣たちの戦いによって、地球は壊滅的な被害を受けていた。人類が各地の再建を図る中、特務機関モナークは怪獣のルーツを探ろうとする。そんな中、ゴジラがフロリダにあるハイテク企業エイペックス社を襲撃。モナークとエイペックスは、ゴジラという脅威への対抗手段として、髑髏島に生息するコングを連れ出そうとするのだった。

作戦に参加するのは、ネイサン・リンド博士やアイリーン博士、そしてコングと唯一心を通わせることのできる少女ジア。一方、神出鬼没で破壊活動を繰り返すゴジラの真意を知ろうとするマディソンと級友のジョシュ、エイペックスの陰謀説を唱えるバーニーは行動を共にする。さらにエイペックスのウォルター・シモンズCEO、故芹沢猪四郎博士の息子で研究員の芹沢蓮らも巻き込んで、人々の思惑が錯綜するのだった。やがて、彼らは史上最大の激突を目にすることとなる。ゴジラとコングは人類の味方か、それとも敵か。二体の怪獣はなぜ戦うのか、そして戦いの勝者は……。

出演者には『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』からマディソン役のミリー・ボビー・ブラウン、父親マーク役のカイル・チャンドラーが続投。新キャストにはアレクサンダー・スカルスガルド、レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、エイザ・ゴンザレス、ジュリアン・デニソン、デミアン・ビチル、そして日本から小栗旬が参戦している。

東宝映画『キングコング対ゴジラ』(1962)から約60年ぶりとなる世紀の決戦で監督を務めるのは、『サプライズ』(2011)『ザ・ゲスト』(2014)のアダム・ウィンガード。1962年の対決時は勝敗の決着がつかなかったが、今回は「勝者を決めたい」と宣言済み。113分(1時間53分)という短い上映時間に因縁の対決をぎゅっと詰め込み、「最初から最後まで高密度のジェットコースター」を目指して怪獣バトル映画を完成させた。ただし、過去にはゴジラの原点が第二次世界大戦時の原爆投下であることも踏まえるとコメント。シリーズの根幹に忠実な一作も志向されている。

脚本は『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)エリック・ピアソン、『GODZILLA ゴジラ』『キングコング:髑髏島の巨神』のマックス・ボレンスタインが執筆。原案は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのテリー・ロッシオと『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のマイケル・ドハティ&ザック・シールズが務めた。

映画『ゴジラvsコング』は2021年7月2日(金)より全国公開中。

『ゴジラvsコング』公式サイト