国内 奈良弁で苦労、目の保養はキンプリ…「和製サッチャー」高市早苗氏の意外な弱点
【写真12枚】32歳、タイトなフォーマルですだれ前髪の高市早苗氏。他、全身写真など
──当選9回、政府・与党の要職を歴任して、名立たる大物との邂逅を重ねる中で、政界遊泳術の手ほどを受けたような「師匠」は誰に当たるのでしょうか。
「いや……。私、誰にも手ほどきをしてもらったことないんです。尊敬する女性政治家は、たとえば参院議員の有村治子さん(元行革相)や小野田紀美さん(元法務政務官)かな……」
──おふたりとも高市さんよりだいぶ後輩ですね。
「見習うべきところがいっぱいあります。有村さんは知識が豊かなうえに、言葉遣いがとても綺麗。私はうっかり期数が下の議員にタメ口をきいたりして、後で国会便覧で年上だと知って、『申し訳ないことしてしもうた!』と、後悔ばかりです。小野田さんはテキパキとすごいスピードで、わかりやすくしゃべれる。あれだけの能力があるのはうらやましい」
──高市さんの若手時代には、土井たか子さん(女性初の衆院議長)や森山真弓さん(女性初の官房長官)が現職で永田町にいましたよね?
「土井さんや、森山さんはすごいなあって見ていましたが、私はあのようにキリッとした感じにはなれない。性別に関係なく現職で最も尊敬しているのは、やっぱり安倍元総理かな。閣僚としてそばで見ていてすごいなと思いました」
──安倍さんのどういった点が?
「頭の回転の早さ。予算委員会で批判されたら、パパパパッと即言い返す。野党からは評判悪かったけど、あの反射神経のすごさっていうか、よく短時間で頭回るなあと思って。あと、かなり長い演説であっても、原稿ナシで、力強く演説をされますよね。あれは、ご自宅で昭恵さんに『うるさい!』と叱られながら、大声で練習するらしいんですが、あれだけ堂々と早口でしゃべるのは、私じゃできへん」
──そうですか?
「まず、奈良県民は割としゃべるの遅いんで。最初から最後まで関西弁でよかったら相当な速さでしゃべれるんですが、標準語で無理すると、けっこう噛むんですよ。イントネーションを一瞬考えるので、すごく遅くなるんです」
──なるほど、標準語を話している高市さんの話し方は、関西弁の時よりマイルドに聞こえます。
「たとえば、国会質疑の前に30分で収まるように、文字数を計算してパソコンに打ち込んでおくんですよ。ほんで、声を出して読んでみるんです。標準語でやると時間オーバーして、終わらへん。で、関西弁でやるとピターッとはまる。はまるどころか、時間が余る。今日はどっちにしようって迷って、無理して標準語でがんばってみて、やっぱり関西弁でやるべきだったと後悔する時もあります」
──へえ~。
「困ることもあるんですよ。テレビ討論を関西弁でやると、視聴者から抗議の電話やメールをたくさん受けるんです。『一国の総理を目指す人間なのに、国民に失礼だ』とか。国会質疑にしても、全国から見られているわけで、関西弁がわかりにくい方もいらっしゃる。だから、標準語でやらなあかん、というプレッシャーもあり、総裁選の時も、鎮痛剤でボーッとした頭ではありながら、とにかく標準語、標準語って自分に言い聞かせながらがんばったんですよ。だけど、家で録画を見直したらかなり関西弁が入っていましたね。いやー、まだまだ未熟者ですね」
──そんな弱点があったとは……。
「実は、視力も弱いんで、これが二重苦なんです。国会質疑では机上に置いてある時計も見えない」
──近眼なんですね。今日はコンタクトレンズを入れているんですか?
「いや、裸眼で過ごしています。私、目にモノを入れるのが怖いので。しかも、肌が弱くて、メガネをかけると鼻の付け根のところが剥けるんです。メガネは、運転用と、家用を1個ずつ持っているだけ」
──家ではかけている?
「いいえ。テレビをつけていて、King & Princeが出てきた時だけ、見なきゃってパッとかけて。そういう時に使うメガネ。ドラマの時はボヤッとしていてもストーリーはわかりますから、かけない」
──政治家の場合、顔が命だから、途中からメガネをかけはじめると有権者に気付いてもらえなくなるというリスクがある。
「肌が弱くなければ、メガネ美人をめざしたいですがね。いちばん面白かったのは、本会議場でダンナ(山本拓・前衆院議員)が目の前を通って、私にニコッと笑って会釈した。その時、全然見えていなくて、完全に無視したらしいんですよ。それで『仮面夫婦』という噂がワッと広まって、週刊誌に出た。反対に、ダンナと輪郭が似た人が参院にいて、私、その人に間違えて手を振ったことがあるんです。『どうして、高市がオレに???』という感じで、その人がすごく不思議がっていたという話は、後になって知りました」
(第3回につづく)
【プロフィール】高市早苗(たかいち・さなえ)/1961年生まれ。神戸大学経営学部卒業、松下政経塾卒塾。1993年に初当選後、衆議院では、文部科学委員長、議院運営委員長などを歴任。内閣では、内閣府特命担当大臣(3回任命)、総務大臣(5回任命で史上最長在職期間を記録)などを歴任。現在は、自民党政調会長(3期)。奈良2区選出、当選9回。
【インタビュアー・構成】常井健一(とこい・けんいち)/1979年茨城県生まれ。朝日新聞出版などを経て、フリーに。数々の独占告白を手掛け、粘り強い政界取材に定評がある。『地方選』(角川書店)、『無敗の男』(文藝春秋)など著書多数。政治家の妻や女性議員たちの“生きづらさ”に迫った最新刊『おもちゃ
※週刊ポスト2022年3月18・25日号