Game*Sparkレビュー:『ダイイングライト2 ステイ ヒューマン』(Game Spark) - Yahoo!ニュース
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注意本記事には取り扱うタイトル上どうしても、ネタバレおよびグロテスクな表現が含まれます。そのため事前情報は極力入れずにプレイしたい方、CERO:Z判定の表現は苦手だという方は、この時点でブラウザバックすることを強くおすすめします。関連画像を見るお砂糖、スパイス、素敵なものいっぱい……という方向とはやや趣が異なりますが、ゾンビ、オープンワールド、パルクールという要素が見事に混ざりあった結果生まれた『ダイイングライト』シリーズ。そのドラマチックなストーリー展開とボリュームたっぷりなプレイ体験が人気を呼び、もともとは2015年にPS4/Xbox One/PC向けに発売されたのが、2022年1月13日にはニンテンドースイッチ版『ダイイングライト プラチナエディション』もリリースされました。今回はそんなシリーズ最新作『ダイイングライト2 ステイ ヒューマン』をご紹介。PS5/PS4(国内版パブリッシャーはスパイク・チュンソフト)/Xbox Series X|S/Xbox One/Windows(Steam、Epic Gamesストア)向けには2月4日に配信。ニンテンドースイッチ版(クラウドバージョン)は2022年中にリリース予定です。なお今回のレビューではPS4版をプレイしています。『ダイイングライト2 ステイ ヒューマン』とは?本作はパルクール×オープンワールドのゾンビアクションアドベンチャー。前作でGRE(世界救援活動会)がやらかして始まった感染症騒ぎは、一旦は収束したかに見えましたが結局世界は崩壊。本作の物語はそこから15年後、そんな追い詰められた人類の最後の砦である「シティ」を舞台に進んでいきます。都市ひとつが壁によって隔離されており、生き残った人々は各拠点に身を寄せ合い、建物の屋上などを巧みに利用しながら、なんとか毎日を凌いでいます。主人公であるエイデンは、特定の勢力や拠点に属さない流れ者である「流浪人」。彼はシティを足がかりに、自分の目標を追い求めていくことになります。15年前にはぐれてしまった妹が生きていることを願って……。概要今作は、過去シリーズのシステムを引き継ぎつつも、より遊びやすく、ボリュームたっぷりに進化を遂げたタイトルになっています。まずプレイ体験の核となるパルクールについては、マップとその建物構造のおかげでよりダイナミックな移動が可能に。特に建物は内外ともによく作り込まれており、前作からの大きく進化を感じます。スキルについても、「プレイヤーの行動がキャラクターの成長につながる」という根底のプレイバリューはそのままに各項目を大幅に整理。「戦闘」と「パルクール」の2つに絞ったことで、要素がバラけて中途半端になりがちだった前作よりも、効果的に成長できるようデザインされています。またストーリーについては、「勢力関係がシナリオ展開に深く絡む」という試みがされており、これは前作DLC『ザ・フォロイング』をさらに発展させてた挑戦的なアプローチです。選択が一部のストーリーやマップに影響を与えるというこのシステムは、プレイヤーに対して「ゲーム世界で生きている」という没入感と、「選択による結果の重さ」というある種の緊張感を与え、それによって行き着いた結末には大きく感情が揺さぶられます。一方で、前作より「制限をかけられた」という印象を受ける部分もいくつか存在します。例えばパルクールについては、軽快な動きが可能になるまで、スキルアップにかかる時間がやや長い体感です。また「スタミナゲージ」が登り降りにも適用されたことで余計なプレッシャーがかかり、特に序盤では、爽快感が抑えめになってしまいストレスを感じます。「免疫力ゲージ」についても同様で、夜だけでなく暗がりや汚染エリアにいると減少していき、ゼロになるとゲームオーバーというシステムは、難易度にもよりますが、やはり行動に制限をかけられたという印象の方が大きくなりがちでした。そして避けて通れないバグについての諸問題。致命的なのは少ないものの、発生頻度の高さがどうしても気になります。特にゲームの再起動が必要になる不具合が発生した時は、プレイ体験の没入感を削ぐという意味において大きな問題でした。幸い記事執筆中に配信されたアップデートを適用してからはやや減少しましたが……。ともあれ、プレイしていく中で本作には大小様々な良し悪しがあったものの、全体的に見れば「これを待っていたんだよ」という、満足度の高いプレイ体験でした。今回のレビューはこのことを前提にしつつ、各要素について触れていきたいと思います。話題のバグと実際について筆者はもともと「オープンワールドのゲームでは多少の不具合はつきものよね」という構えで、しばしば話題に上がっていたバグについても、ネットで飛び交う情報をみては「いくらなんでも大袈裟では?」と懐疑的でしたが、実際のプレイでしばしば遭遇するうちに心の天秤は納得の方へ傾きました。シングルモードプレイ中にしばしば発生したのは「キャラクター表示が泥人形」「音声が途切れたり遅れて再生される」「字幕が勝手に早送りされ続ける」「パルクール移動中にロードが入って一時停止」といった種類のもの。それぞれは小さいものであっても、積み重なればかなりのストレスでしたね……。そして発生回数こそ少なかったものの、「テクスチャが読み込まれず無限落下」「効果音がずっと鳴り続ける」といったものは、ゲームを再起動しないと回復せず、特にシナリオも終盤でこれからラストスパート!というところで発生した時は、流石に没入感がごっそり削がれて暫くコントローラーを置いてしまうほどでした。アップデートそんな中で、2月12日に配信されたアップデートはまさに上記バグの一部を改善する内容のものでした。再度プレイして確認しましたが、いまのところ効果音が遅れて再生されたり、反対に無音になったりする程度で、初期よりはだいぶマシになりました。ただしオンラインの協力プレイについては、依然バグというよりとにかく動作が不安定だったり、そもそも接続できない回数の方が多いですね……。マルチプレイそういった問題はありますが、オンラインで他のプレイヤーと感染者で溢れる街を駆け抜けクエストをこなすのはやはり楽しいものです。特に自分とは異なる選択によってシナリオが進んでる場合は、より新鮮なプレイ体験を感じられます。さらに自分とは進行度の違うプレイヤーが使う装備を見て「そんなのあるの!?」と驚いたりも。よりわかりやすくなったUIゲーム画面前作同様、マップアイコンがゲーム画面上部のコンパスに連動表示されるため、クエスト開始地点など、目的地の方角と距離が視覚的にわかりやすい本作。これに加えてランダムイベントや施設発見といった情報が常時更新され、マップ画面から表示する項目の変更も可能です。強いて難点を挙げるとすれば、「情報がクエスト中でもおかまいなしに表示される」ことと、前作にはあった「ミニマップ表示機能がない」こと。特に後者は、コンパスのおかげでそこまで困ることはないものの、とっさの位置確認でもいちいちメニューからマップを開くという手間があったので、是非とも実装して欲しい機能でした。また話は少し異なりますが、開閉可能なドアなどは、もう少し遠い位置からでもアイコン表示されると嬉しいですね。教会でホーコンを探し回ってる時、ドアに触れるほど近づいてようやく「開ける」という表示が出てきた時は流石にどうなんだと思いましたよ……!メニュー画面全般前作と比較してメニュー画面全般はおおきく進化しています。項目タブ、カテゴリー、アイコンのサイズが大きめに変更され、カーソル移動による選択方式も相まって、よりわかりやすく直感的に操作できるようになりました。詳細がポップアップウィンドウ形式で表示されるので、文字を小さくして1枚の画面内に詰める必要がなくなったことも、見た目のわかりやすさに繋がっていますね。なおインベントリ画面では、前作と違い主人公の見た目をその場で確認しながら装備変更が行えるので、ちょっとしたオシャレコーディネートも楽しめるのが個人的に好きなところでした。ただしタブやページ切り替えの際、カーソルが直前の位置に残り続けるため、いちいち当該項目に移動しなければならないのはやや面倒。この対策として、カーソル移動と、項目・アイコン自体をハイライトする過去作の方法のどちらかを選ぶことができたら良いかもしれません。無茶を言っているのは承知の上で……!<cms-pagelink data-text=”次ページ:『ダイイングライト2 ステイ ヒューマン』操作感やストーリーをレビュー” data-page=”2” data-class=”center”></cms-pagelink>パルクールより進化した素晴らしいマップデザイン感染者を躱し、柵を飛び越え、入り組んだ構造物を駆け上がり屋上から屋上へと飛び移る……『ダイイングライト』シリーズの醍醐味はやはりこういったパルクールにあります。前作では中盤以降に別マップが解放され、スキルアップによって強化されたキャラクターと、シナリオを通してパルクールに慣れてきたプレイヤーが、より難度のあるマップを走っていくという巧みなレベルデザインがされていました。今作も基本的にはその流れを踏襲しつつも、さらに高低差の激しいアスレチックな構造が増え、前作よりもダイナミックな移動が可能に。またシナリオ後半で入手するパラグライダーは、高層ビルが立ち並ぶマップでその真価を発揮し、移動ルートにさらに自由な幅をもたらしました。パラグライダーは強化すると上昇までできる優秀な子で、グラップリングと併用すると、空中ブランコの要領で移動しつつ隙あらば空を舞うというそれはもう無茶な機動で強行突破できるようになります。ルートデザインの進化個人的に素晴らしいと感じたのは、マップに点在する建物とその部屋のルートデザインです。内部にはゾンビや資源アイテムが転がっており、経験値稼ぎと収集の心をくすぐるのですが、パルクール用のルートとしても利用できるのです。地上に降りるのも、屋上を渡るのも移動の勢いを落としかねない!といった場面で、こういった部屋を通り抜けることでとっさの「繋ぎ」にもなるという大変ありがたい存在です。またもうひとつの素晴らしい点は、一部のステージ・建物内では「複数の移動ルートが用意されている」こと。例えば、パルクールスキル不足で遠くの足場に届かないプレイヤーを想定し、手すりなどの壁伝い移動用オブジェクトが用意されてある……といったものですね。これは前作でしばしば発生した、「見かけ上は届く距離」であるにもかかわらず、なぜかジャンプの飛距離が急に制限されて届かない場所がある「ルート制限問題」を大きく改善したものでした。スタミナゲージが……ところが「スタミナゲージ」が絡むと、せっかくのパルクールに「制限」を感じるストレスな場面が増えてきます。前作ではもともと戦闘時やダッシュ時におけるシステムで、今回は平面移動においては無限の持久力を誇りますが、何故かパルクールの上下移動時に適用されているのです。これが地味に厄介で、ともすれば前作主人公よりも肉体的に強いはずなのに、斜面を駆け上がったり縁などに掴まったりするとスタミナが減少していき、力尽きれば落下……高さによってはダメージを受けるか、最悪の場合は死亡してしまうのです。これに加えてさらに辛いのは、スティック押し込みによるダッシュ直後はゲージ半分が消費されること。狭い足場からダッシュで助走をつけて壁に飛び移り、そこからさらに登っていく……という流れでこの消費量は操作ミスを許容しません。このため前作であれば、掴まってからじっくり狙いをつけることも可能でしたが、本作ではゲージに急かされプレッシャーを感じてしまいがち。そこへさらに逃走劇など「ミッション自体の制限時間」が絡むとバイターみたいな呻き声が漏れました。個人的にはこのプレッシャーこそがストレスの原因ですね。こういったストレスは主人公エイデンのスキルアップや、グラップリングフックなどのツールの使用で軽減されていきます。これは完全な憶測ですが、もしかしたら「苦労して育て上げた先にある爽快なパルクール」というカタルシスを演出する意図があるのかもしれません。しかし前作を経験している身からすると「本来の爽快感が制限されている」という印象が拭えませんでした。戦闘武器はガンガン改造すべし今作の戦闘も、前作と同じで基本的には近接武器による斬撃か打撃が主な攻撃手段で、弓やクロスボウといった遠距離武器は、ある程度シナリオを進めると活躍してくるようになります。見た目は同じでも基本攻撃力や耐久力などそれぞれ異なるパラメータがランダムで設定されており、中には改造によって基本攻撃力に火や氷といった特殊効果・属性を付けることができます。しかも改造によって耐久力が回復するので、くたびれてきた愛用の武器を大事に長く使い続けることもできたり。前作における修理とは少々異なりますが、個人的にはこの改造システムは大好きです。ただし改造は、拠点でクラフトマスターなるショップ(人物?)から設計図を購入し、手持ちの資源アイテムを消費してクラフトという段階が必要でやや面倒だったり。とはいえ前作よりも入手武器の耐久度が平気で100を超えることが多く、しかもシナリオが進むにつれ基本攻撃力のインフレが始まるので、使い捨て上等で無改造のまま進めても問題ないでしょう。敵は基本的に避けるべし登場する敵は「感染者」と「人間」の2種類。緩慢な動きの前者と、回避やガードといったテクニカルな動きをする後者と、相手によって戦闘のアプローチが変わるのが面白いですね。倒せば死体から資源アイテムなどが入手可能で改造にも利用できるのですが、戦闘にかかる時間や装備やアイテムの消耗を考えると、正直なところそこらの敵を倒したところであんまり旨みがないような……。とはいえこちらは武器以外にも消耗品として手榴弾やデコイなどの投擲アイテムが使えますし、または背後から忍び寄ってテイクダウンで消耗無しの一撃必殺で倒せるので、ここらへんはしっかりプレイヤーの攻略スタイルを受け入れる懐の深さがゲームデザインに表れています。どこぞのショッピングモールでエンジョイしていたジャーナリストと違い、本シリーズのゲームデザインは感染者相手に無双をするというより、リスクの取捨選択に重きを置いていますからね。まあ前述の施設などを攻略してスキルアップを積極的に行っていれば、難易度・損耗を度外視で大暴れはできますが……。ちなみに前作でしばしば話題に上がった表現規制の問題……今回はまったく一切の変更はありませんでした。感染者だろうが人間だろうが、身体の一部は吹っ飛び、血は燃え上がる赤でした。気になる点敵との戦闘において、武器を振るえばスタミナゲージが減少していき、底をついてしまうと息切れを起こして大振りな攻撃になってしまうのは前作と同様。そこで、スタミナ配分を考えながら敵との距離感を適切にコントロールして着実に攻撃を当てていく……という本シリーズの戦闘スタイルが筆者は大好きです……ただしパルクールの挙動が優先されない限り。というのも今作は、戦闘中に足場が少しでも傾斜になるとパルクールの動きが優先され、何故か攻撃ができなくなるのです。敵はその斜面をほんの少し降りた先から切っ先を当てて攻撃してくるのに、我らが主人公エイデンは斜面に滅法弱く、ちょっとした傾斜でも武器が持てなくなるという謎の現象。挙げ句スタミナゲージも減っていくという理不尽さ。もちろん戦う場所を選んで慎重に立ち回ればある程度は防げる話ではありますが、建物のデザイン上、特に序盤のマップにおいてこれは大きなストレスでした。主人公エイデンは壁走りもできる強靭な足腰を多少の傾斜にもどうか使っていただきたい。スキル飛んだり走ったりすればパルクレールスキルが、敵と戦えば戦闘スキルの経験値が貯まっていき、ある一定値を超えるとスキルポイントが1つ増え、新しいスキルをアンロックすることができます。ただしその際、基礎体力と基礎スタミナの値が足りないと、アンロックされたスキルでも取得はできません。そのためGRE施設などでインヒビターを入手して基礎ステータスもレベルアップさせておく必要があります。これは個人的な体感ですが、ストーリーだけ進める場合、なかなか経験値が貯まらないのでスキルアップのスピードはだいぶ遅い印象でした。しかもインヒビターによるレベルアップ要素が足を引っ張ります。とはいえこれはストーリーだけを進める場合であって、探索を重点的にこなしていればもっと早く最強の主人公エイデン君に成長するので、バランスとしてはちょうど良いかなとも感じます。ちなみにドロップキックは今作においても最も頼れる相棒として君臨しています。探索各所で感じる生存者達の「年月の重み」探索はオープンワールドゲームである本作において醍醐味の一つ。個人的に今作の探索要素は、ゲームの世界観をより深く体験できるという意味において、前作よりもさらに力の入った設計がされていると感じます。それは今作の舞台が、ハラン事件からさらに15年後であるところが大きく、シティのあちこちで確認できる生存者の暮らしや、かつての世界の名残りが「年月の重み」として深みのあるアクセントになっているからです。もちろん前作のハランにもそういったものありましたが、どちらかといえば「人々の最後のあがき」といった印象が強く、反対に今作のシティでは「受け入れて生き延びてきた」という印象でした。特に、地道に作られていったのであろう各拠点の構造や、屋上含むあちこちで生存者達が野菜などを育てている様子から感じ取れます。これらは素晴らしい没入感を与えてくれるので、単純なフレーバー以上に大きな役割を果たしていると言えましょう。時間帯による変化前作にもあった昼夜のシステムは今作にも登場します。前作と異なる点は、主人公に設定された「免疫力」なるゲージのおかげで、夜や暗がりの滞在時間に制限がついたこと。これに加えて化学物質汚染エリアでのんびり探索でもしていたらあっという間に死亡してしまうので要注意です。キャラクターを強化すればゲージが増加するので、シナリオ後半にさしかかる頃にはそこまで気にはなりませんが、ややストレスな要素。とはいえ、そういった制限はついたものの、ボラタイルに熱烈アタックされていた前作よりは、チェイスはあれど今作のほうが夜道を出歩きやすかったかもしれません。なんやかんやで拠点やUVライト、さらには免疫力用回復アイテムが転がっているおかげで、夜の移動はだいぶやりやすくなっています。ストーリー進行でしばしば夜帯の活動を求められることもありますが、あまりストレスを感じることはありませんでした。チェイスとは、特殊感染者「ハウラー」に発見されると開始される追いかけっこのこと。4段階でチェイスレベルが上がり、追いかけてくる感染者の数はどんどん増えてきます。イメージとしては「バイラルがいっぱいやってくる!」という感じ。移動ルートさえ間違えなければ、さほど苦労せず安全圏まで逃げ切れるのでそこまで脅威には感じません。というよりそもそもハウラー自体、発見されるまでの時間に余裕があるのでそこまで理不尽なことはない印象だったり。なお夜間帯は、戦闘とパルクールの経験値にボーナスがつきます。チェイスを利用してそれらをさらにブーストさせることで、一気にスキルポイントや資源アイテムを稼ぐというハイリスクハイリターンな戦法もできたり。施設街には、パルクールで利用できる建物以外にも、各勢力の拠点、盗賊含む生存者のキャンプ、ナイトランナーの隠れ家、GRE関連の施設、荒廃した店や避難車両などなど、スキルアップや探索の役に立つ施設があちこちに存在します。街中を移動しているだけでこれらの施設が気になって、ついついクエストよりも先に足を運んでしまったり。探索という点では、GRE施設や荒廃した店などは、感染者がうろつく暗がりや化学物質による汚染エリアをかいくぐって、資源アイテムやインヒビターを探し回るなど遊びごたえ抜群。また夜間帯の方が、内部の感染者数が少なかったりと、攻略するにあたり普段のゲームよりも戦略的なアプローチが必要になってくるのが面白いですね。サバイバーセンスを使って周囲を索敵したときに、レア以上の資源アイテムが散らばっていてよっしゃラッキー!と思いきや、同時に敵の赤いシルエットが大量に並んだ時の絶望感は最高でした。なおボタンを押しても何故かサバイバーセンスが不発する時があるので、慎重に歩みを進めましょう。クエストを進めるにあたり、拠点を除いたそれら施設を利用することはありますが、それ以外のゲームプレイでは、利用するかどうかはプレイヤーの自由で、強制されることはありません。もちろん、利用すればそれだけ貴重なアイテムや、スキルアップを行うことはできます。特に攻略後はファストトラベル機能としても利用できる「地下鉄の駅」は、クエスト内の移動距離が長くなってくるシナリオ中盤以降においておおいに助かる存在です。しかし、基本的にはメインクエストをこなしていくだけで必要最低限のスキルや装備は揃うので、繰り返しますが、こういった探索をするか否かはプレイヤーの判断次第。自由に選べるゲームデザインは評価が高いところです。選択によって勢力とマップに影響が出るマップはいくつかのエリアに分けられており、それぞれ「ピースキーパー」「サバイバー」「レネゲイド」といった生存者コミュニティの勢力によって治められています(?)。本作のシナリオは基本的に「ピースキーパー」と「サバイバー」が中心となって進行し、共通の敵として「レネゲイド」が置かれているような関係図です。記事冒頭でも書きましたが、本作の挑戦的な試みとして、今回はプレイヤーの選択がその勢力図に影響を与えるシステムが導入されています。マップの中には「給水塔」や「変電所」といった施設が存在しており、感染者や敵の手に落ちたこれらを制圧後には、「ピースキーパー」「サバイバー」どちらの生存者コミュニティに施設機能を割り当てるかという選択肢が表示されます。今あるものを消費していくしかないという限界極まった荒廃世界において、水と電力はライフラインを支える何よりも貴重な存在。そのためマップエリアのそれら施設を手に入れたコミュニティが、そのままエリアの勢力図を塗り替えることになります。どちらの勢力に肩入れするかはプレイヤー次第ですが、各勢力の見返りとして、街中を移動しやすくなる設備や、感染者へのトラップ設置などがされていきます。よりダイレクトに影響を及ぼすストーリー中の選択とはやや異なりますが、これもプレイヤーの意志が反映される要素で、いつの間にかコミュニティへの帰属意識めいたものが芽生えているのが面白いプレイ体験でした。個人的にはクロスボウが欲しかったのでピースキーパーにじゃぶじゃぶ回したり。ストーリー本作において「プレイヤーの選択によって分岐するストーリー」というシステムは、非常に力が注がれている部分。実際、選択とその結果による重さは前作DLC「ザ・フォロウィング」よりも強烈なプレイ体験となりました。ところどころ共通ルートではあるもの、選んだルートによって敵味方が入れ替わり、この誠実そうなキャラクターが実は……といったイベントが重なると、自分しか信じられない!といった疑心暗鬼に陥るのが最高に楽しいですね。しかもその敵味方の線引も、「誰にとって」という視点が絡むため非常に難しいのがニクい演出。ホーコン!俺にはあんたしかいない!ホーコン……?なお日本語の声優さん達も良いお芝居をしてくれるので、物語にぐいぐい引き込まれます。特に主人公エイデンは、一部ムービーを除き、表情が見えないのにもかかわらず、声だけで見事に感情の変化を表現しきっており、涙を流して訴えかけるシーンの凄まじさはコントローラーを握るこちらも思わず涙ぐむ程でした。ただし……個人的に上記システムによって変化するストーリーは大いに楽しみました。おつかいゲーになりがちなのを、「妹のミアを探す」という一貫した目的を根底に置くことで、シティ各勢力に協力する自然な流れにしつつ、選択によって変わっていく展開が中だるみを防いでいます。しかしながらお話全体を見るとき、細かい部分の整合性は後回しにしている印象も強いです。主人公の超パワー発現のタイミングがお話の都合に見えるのはまだ良いのですが、ワルツに関する部分はもっとご都合的というか、言動が支離滅裂の一歩手前になってしまっています。そのため彼とのラストバトルは、会話パートと形態変化による戦闘が繰り返し3回目に突入したあたりで「いい加減にしろ!」となり、そこから雑に処理されるGREキーとミアの下りに気持ちが全く入り込めませんでした。なお筆者の場合、そのまま街が火の海になっておしまいと続いたので、しばらく「何だったんだ今のは……」と真顔になりました。分岐によってエンディングが変わるので、他のパターンであればまだ納得のいく形で決着するのかもしれません。よしそれなら確認だ……となると今度は「周回要素がまったく用意されていない」ことが、最大の問題となって立ち塞がります。プレイ中はセーブデータを分けて保存できず、クリア後は強くてニューゲームも無い。せっかく「あの時、別の選択をしていたらどうなっていたのだろう」という、周回プレイのモチベーションがあったのに、もう一度最初から30時間以上やり直しというのは流石に面倒です。オンラインで他プレイヤーのミッションにお邪魔すれば良いとは思うものの、結局のところそれは自分のプレイ体験では無いのが辛い。中途半端に時間を巻き戻してクリア後の世界を探索させるくらいなら、せめて周回要素を入れて欲しかったですね……!ただし、PC版ではバックアップセーブ機能がパッチにて追加されたので、コンシューマ機にも期待したいところ。おわりに前作のシステムを整理しつつ、挑戦的なアプローチと圧倒的なボリュームを盛り込んだことで、根幹となる面白さはそのままに遊びごたえたっぷりになった本作。もちろん不満点はありますが、やはり全体で見れば楽しいプレイ体験であったことは間違いありません。だからこそ、動作不安定などのバグが一刻も早く解消されることを願ってやみません。総評:★★良い点・ダイナミックに進化したパルクール・挑戦的なシナリオ分岐・わかりやすく整理されたUI悪い点・整合性の足りないストーリー・没入感を削ぐバグの多さ・前作から制限をかけられた一部システム「Game*Sparkレビュー」ではハードコアゲーマーなライターから読者に向けて、オリジナルレビューをお届けします。対象となるタイトルはAAAからインディーまで、ジャンルやプラットフォームを問わず「ハードコアゲーマーのアンテナが反応するゲーム」です。このレビューでは、3段階評価をベースに「良い点」「悪い点」を挙げながら総評を下します。最低評価は「難アリ/オススメできない」、中評価は「ふつう/そこそこオススメ」、最高評価は「とても面白い/とてもオススメできる」に当ります。「プレイレポート」として公開している記事では、本企画と同様の評価を付けません。また、記事の性質上、ストーリーなどの「ネタバレ」を含む場合がありますので、閲覧の際はご留意ください。レビュー記事に使ったゲームは「編集部およびライターが購入した物」であり、デベロッパー/パブリッシャーから提供されるゲームソフトは利用しません。また、「Game*Sparkレビュー」は「PR記事」と一切の関係を結ばず、すべての評価内容がライターの価値観に基づきます。特定の企業やプロモーション、ユーザーコミュニティにも影響を受けません。なお、マルチプラットフォームで展開されている作品においては、対応している機種のうちのひとつのエディションのみをプレイし、評価します。そのため、本文内でプレイした際の使用機種についても明記しています。
Game*Spark 麦秋
最終更新:Game Spark