沿って, smartwatches 11/08/2022

Engadget Logo エンガジェット日本版 トップGTドライバーを打ち負かしたAIドライバー「Gran Turismo Sophy」が変えるゲームの未来(本田雅一)

ソニーは2020年にAIの研究開発を目的にした新しい会社ソニーAIを設立。ソニーAIはニューラルネットワーク処理を活用する深層学習の研究を行ってきたが、その最初の発表がプレイステーションシリーズの人気ドライブシミュレータ「グランツーリスモ」による模擬レースになるとは誰が予想しただろうか。

Gran Turismo Sophyと名付けられた同社開発のAIは、ドライブシミュレータによる仮想レースで世界トップのドライバーを打ち負かす実力を披露した。

とはいえ、古い世代の”コンピュータレースゲーム”を経験している世代からすると、”どうせシステムがズルしてるのでは?”と思うかもしれない。しかし、彼女(Sophy)の実力は本物だ。そのレースの様子を見れば、Sophyが本当にレースをしていることは一目瞭然だった。

トップF1ドライバーにも通じるドライビングスキル

模擬レースは、異なるレース経験を積んだ4種類のSophyがドライブする車(ポルシェ 911 RSR)が4人のGran Turismoトップドライバーと一緒に走るというものだったが、Sophy操作車両の1台が独走。プレーヤー車両とバトルしている中で逃げ、独走で優勝とベストラップを奪ったのだった。だが、興味深かったのは2位から4位までの争いだ。

2位となった山中智瑛選手は当初、トップ赤い車両のSophyについて行っていたが、すぐ後ろの4位を走る青いSophyが山中選手にアタック。この青いSophyのアタックを防御しているうちに赤いSophyが単独で逃げ始める。

青いSophyは人間ではそこまでやらないだろうという、ギリギリのインを突いてくる。どこまでなら縁石に乗せても大丈夫ということを知ってるのだろう。というのも、作業車両などの出入り口と思われるターマック(舗装)されてるエリアもうまく使いながら、インにズバッと入り、芝のエリアは避けるといった実に細かいドライブをしている部分もあったからだ。

一方で、レースでは許される程度の”軽いキス(接触)”はするものの、決してクラッシュはしないギリギリまで突っ込んでくる。そんなバトルに追いついてきた宮園拓真選手が青いSophyを攻め始めたことで、山中選手へのアタックも和らいだが、たった3周の模擬レースの中でもヒリヒリするようなバトルが観られた。

どのようにしてこのAIドライバーSophyが腕を磨いたのかは後述するが、興味深かったのはGran Turismoの開発を行ってきたポリフォニーデジタル代表の山内一典氏が「Sophyは普通の人間なら行わないような、しかしトップF1ドライバーなどには見られるドライビングを行なっている」ことがデータの分析からわかっていると話したことだ。

人間のドライバーは、まずブレーキングでしっかりと速度を落とし前輪荷重が増加していることを意識して、ややブレーキは残しつつも減速をほぼ終えてから前輪に舵角を与えて曲げ始める。車が旋回を感じ始めると前外輪への荷重増加を感じながらコーナーで脱出方向に車が向いているかを見極め、今度はアクセル操作での荷重変化を感じながら加速していく。

ところがSophyはブレーキを”かなり”残しながらコーナーに入っていき、旋回のきっかけを掴むと後外輪のグリップも使いながらターンインさせていくのだとか。イメージ的には”前輪+後外輪”の三輪でコーナリングをコントロールするイメージだという。

詳細な部分で筆者が誤解している部分もあるかもしれないが、山内氏は「レースドライビングの教科書を書き換えることになるかもしれない」とSophyのドライビングスタイルを評価した。

クラウドで並列化された仮想レースを繰り返し経験

さて、ではSophyはどのように鍛えられたのだろうか。

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使われたのはGran Turismo Sport。シミュレータであるため、コースの状況や車の情報は完璧に数値化できている。Sophyは車を取り巻くさまざまな情報を数値として感じ取りつつ、どのようにすれば少しでも速く走れるのか、そして相手と大きな事故を起こすことなく速く走れるのかを試行錯誤で学んでいく。

実際にはクラウド上で並列で走らせるGran Turismo SportでSophyにレースに参加させ、そこでドライブ操作に対してどのような結果ができたかを評価、比較しながら、どのようにすればラップタイムが向上するのか、相手に抜かれないのか、あるいは相手を抜くことができるのかなどを学んでいくのだ。

模擬レースを見ていると、あえて理想的なライン以外からインに入り、それに反応して相手がインを閉められないところまで確認してから加速しようとする挙動も見られたが、こうした攻撃的なドライビングを頻繁に試すのは上記のような学習を行った結果なのだろう。

ソニーAIによると、最初の1日でサーキットをきちんとラップするところまでSophyは成長するという。その後、さらに2日間、クラウドの中で仮想レースをさせておくと、全プレーヤーのトップ10%に入れるだけの実力を備えるようになり、さらに10〜14日の間、学習をさせていると、今回のデモで使われたようなトップドライバーに匹敵する実力にまで成長するとのこと。トップドライバーになるまでの間にSophyが走るのは、おおよそ30万キロとのことだ。

こうしてトップドライバーに成長したSophyは、その後、トップGTドライバーと2日間、3レースずつの実戦を人間と行うことで学習した。

その2日間(間に3か月の学習、改良期間もあった)その様子を別映像でチェックしてみると、最初の日に行われたレースではライン取りの駆け引きを失敗してコースアウトしていたり、攻撃的になりすぎてオーバーランしてしまったりとミスをしていたが、2日目にはしっかり修正して速いだけではなく”強い”レーサーになっていた。

ただし、強いもののフェアネスの点では疑問もあり、危険を顧みずにアンフェアに我を通す印象もあった。しかしそれも学習したのだろう。結果として発表日の模擬レースでは、実に人間的なレースをしているように見えた。

AIが進化するとゲームは変わる

冒頭で古い世代のレースゲームを知っている世代からみると、AIのドライビングは……と、強くともアンフェアだよなというイメージがあると書いた。確かにAIのドライビングスタイルは異質だが、一方でアンフェアではなく、戦略やドライビング技術として目を見張るような結果にまで成長していた。

ポリフォニーデジタルは、Gran Turismo 7のアップデートでSophyを組み込む予定だという。完璧な反応速度とテクニックをもつSophyとのレースを普通のプレーヤーが楽しむことは難しいかもしれないが、Sophyの優れたスキルをそのままに難易度調整する仕組みを検討しているという。

将来的にはSophyのドライビングと自分のドライビングを比較、分析しながら、より速いドライビングを実現するためにアドバイスを得る、といった機能が追加できるかもしれないが、最終的な目標は単に速く強いドライバーにすることではなく、プレーヤーがより楽しめるためのAIライバルを作り出すことだ。

今後もソニーAIとしては、ほかのゲーム開発者とのコラボレーションを進め、ゲームAIを発展させていくという。多くのゲームがネット対戦化しているが、やはり人間同士の方が楽しいからに違いない。しかし、AIが進化すればゲームの常識は変化するかもしれない。

また、ソニーがゲームだけではなくEVの事業会社を立ち上げようとしていることも興味深い。このAIが将来の自動運転にどのように影響を与えるのか、与えないのか。

なお、Sophyの研究開発成果は、雑誌ネイチャーで発表されるという。

Source:ソニーAI

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