テレビの役割に変化!?「コネクテッドTV」の利用実態に迫る | ウェブ電通報 電通報
近年、「コネクテッドTV(ConnectedTV)」と呼ばれる、インターネットに接続されたテレビが急速に普及しています。
テレビのインターネット結線率はここ5年で26.3%から52.1%へと倍増(※1)。さらにTVerやYouTubeなどの動画配信サービスをテレビで視聴する人が急激に増えており、テレビ受像機は従来の「テレビ放送を見るだけのデバイス」から、動画配信サービスも含めた「動画コンテンツ全般を視聴するデバイス」へと大きく役割を変えています。
そのような中、電通ではこれまで明らかになっていなかった「コネクテッドTV」の利用実態や広告に与える効果について独自調査を実施。本連載では、各種調査の結果を交えながら、企業や放送局が今後「コネクテッドTV」をどのように捉え、付き合っていけばよいのかを考察します。
第1回は、2021年8月に行った「コネクテッドTV利用実態調査」(調査概要はこちら)から見えてきた、従来のテレビ放送の視聴時とは異なる動画配信サービスの視聴スタイルの特徴と、今後の動画を活用したコミュニケーション活動におけるポイントについて電通ラジオテレビビジネスプロデュース局・データ推進部の松友隆幸がお伝えします。
※1 出典:ACR/ex 2016~2021年4-6月、東京50㎞圏、男女12~69歳
※イメージ図
コネクテッドTV視聴の特徴は“専念視聴”と“共視聴”
まずは、主要な動画配信サービスの視聴デバイスについて比較した結果から見ていきましょう。
複数回答のため合計値は100%を超えますひとくくりに動画配信サービスといっても、サービスによって傾向は異なります。「Amazonプライム・ビデオ」「Netflix」「Hulu」で約30~40%、「YouTube」「TVer」「ABEMA」「GYAO!」で約10-20%がテレビ受像機(テレビ機器)での視聴という結果でした。
この差は、視聴コンテンツの内容によるものと考えられます。映画などの長尺コンテンツがメインの「Amazonプライム・ビデオ」「Netflix」「Hulu」は大画面で視聴しやすいテレビ受像機での視聴割合が高くなっています。他の動画配信サービスは、PC/スマートデバイス(以降SD)に比べてテレビ受像機での視聴割合はまだ低く、普及途上といえそうです。
続いて、下図は動画配信サービス・視聴デバイスごとの視聴スタイルについて聞いた結果です。
いわゆるテレビ放送は“ながら視聴”の割合が高いことが特徴ですが、動画配信サービスはテレビ受像機での視聴にもかかわらず“ながら視聴”よりも“専念視聴”の割合が高いという特徴が見られました。
動画配信サービスは、目的を持ってコンテンツを視聴していることが多いため、このような特徴が表れたと考えられますが、PC/SDで視聴した場合との差がほとんどないのは意外な結果といえます。
また、コネクテッドTVでは “共視聴”が半数を超えるという特徴も複数の動画配信サービスで見られました。これはテレビ受像機という大画面ゆえの特徴と考えられ、テレビ受像機が置かれているリビングなどで家族や友人などと一緒にコンテンツを視聴している光景が家庭内で広がっていると想像できます。
テレビ放送のメディアパワーはいまだ健在!ただし若年層には変化の兆し
次に、テレビ放送と動画配信サービスのメディアパワーを比較しました。
個人全体で見ると、利用頻度・利用時間ともに最も高いのはテレビ放送です。テレビ離れが叫ばれている昨今ですが、テレビのメディアパワーはいまだ健在であることが分かります。
一方で、Teen+MF1(15~34歳)といった若年層に絞ってみると、テレビ放送が利用頻度・利用時間ともに最も高いことには変わりないものの、スコアはやや下がり、逆に動画配信サービス、中でもYouTubeのスコアが上がってテレビ放送に迫っている点が目立ちます。
さらに、視聴デバイス別の傾向も見てみましょう。
上図のとおりYouTubeを除くと、全体的にコネクテッドTVでの視聴の方が利用頻度・利用時間が伸びています。これは、コネクテッドTVでの利用の方が習慣化しやすいことや、大画面のため長時間視聴されやすいといったことが理由と考えられます。YouTubeが例外的なのは、動画プラットフォームとして社会のインフラ化しており、コネクテッドTVに比べてPC/SDでの接触機会の方が多いからだと思われます。
以上の結果から、テレビ放送は変わらないメディアパワーを持ちながらも、若年層に関してはYouTubeをはじめとする動画配信サービスの存在感が増している状況が見えてきました。
また、コネクテッドTVでは動画配信サービスの利用頻度・利用時間がより高くなることから、今後コネクテッドTVの普及が進むにつれて、テレビ放送と動画配信サービスの間でテレビ画面のシェア争いが展開されることが想像されます。
これからはコネクテッドTV配信も含めた統合プランニングの時代
今回の調査で、コネクテッドTVには、動画配信サービスならではの能動的な視聴スタイルから来る“専念視聴”と、テレビ受像機ならではの“共視聴”という特徴を併せ持った、独自の視聴スタイルがあることが明らかになりました。また、いまだにテレビ放送のメディアパワーが健在であることが改めて確認できたと同時に、若年層を中心にコネクテッドTVにおける動画配信サービスの存在感が増していることが見えてきました。
今後のコミュニケーション活動においては、従来のテレビ放送内のCMは活用しつつ、並行してコネクテッドTVへの広告配信も検討するといった統合的なメディアプランニング、クリエイティブ制作、そして、広告効果計測を基にしたPDCAサイクルの実践が必要となってくるでしょう。
このような課題感から、電通ではTBSテレビと共同でTVerテレビアプリの広告効果調査スキームを開発するなどの取り組みを始めています(リリースはこちら )。この実証実験では、コネクテッドTVでTVerに掲出される広告を見た場合、「ブランド認知」「利用意向」「興味関心」といった態度変容の項目に、PC/SDで接触したときの約150-225%にあたる非常に高い広告効果があることも確認されました。
テレビ受像機の役割は変わっても、テレビ受像機というデバイスにおいてコミュニケーション活動を行うことが有効であることには変わりません。電通では引き続き、企業と生活者とのコミュニケーション機会の維持・拡大のためにも、放送局やプラットフォーマー各社と連携して、次世代メディアにおける適切なプランニング・効果測定・ソリューション開発を目指していきたいと考えています。次回はコネクテッドTVの広告効果調査・分析について、具体的な取り組みをご紹介します。
【お問い合わせ先】電通 ラジオテレビビジネスプロデュース局データ推進部 朴、松友Email:connectedtv@dentsu.co.jp
【調査概要】「コネクテッドTV利用実態調査」調査目的 :コネクテッドTVでの動画配信サービスの利用実態や、テレビ放送と動画配信サービスの利用実態を明らかにする。調査地区 :全国調査方法 :インターネット調査調査対象 :男女 15~69 歳調査サンプル数 :計2,400s調査実施機関 :株式会社ビデオリサーチ調査期間 :2021年8月20日~2021年8月24日